【東日本台風2年・自主防災】助け合える地域へ、つながり大切

 
かさ上げが完了した堤防から阿武隈川を見つめる加藤さん(左)と三瓶さん。水害の教訓を生かした地域づくりへの思いを新たにする=本宮市

 悲しい思いをもうしたくない―。東日本台風(台風19号)による水害で7人が亡くなった本宮市で、犠牲者を出さないための取り組みが動きだしている。

 JR本宮駅前の本宮5区。北側を安達太良川、東側を阿武隈川が流れ、川に囲まれた地域だ。度重なる水害に見舞われてきたが、幸いにも犠牲者が出たことはなかったという。ただ、複数の商店街が集まり形成されたこの町内会は、昔からの名残で住民同士の関係性は薄かった。「集会所もないから、ほかの町内会のような納涼会などの行事もない。交流がほとんどなかった」と町内会長の加藤一男さん(73)は振り返る。

薄い関係性悔やむ

 そんな地域の希薄な関係性が浮き彫りとなったのが東日本台風だった。おととし10月13日午前1時前に阿武隈川が氾濫した。堤防を越えた濁流は本宮駅前に押し寄せ、本宮5区は9割が浸水。地区内で1人暮らしをしていた女性=当時(78)=が自宅で亡くなっているのが見つかった。水害時に住民同士で声を掛け合う仕組みや連絡体制はなかった。関東で暮らす女性の娘は「母の世話を事前に近所にお願いするべきだった」と悔やんだ。

 「悲劇を繰り返さないために隣近所で助け合える地域の関係性をつくらないといけない」。加藤さんは昨年9月、町内会庶務で消防団分団長などを務めた三瓶裕司さん(57)らと協力して、災害時に住民同士が連携して避難行動などに当たる自主防災組織(自主防)の設置を町内会の役員会で持ち掛けた。約1年かけて議論を重ね、自主防の意義を全世帯に回覧し、協力を呼び掛けた。そして今年7月末、規約が完成し、町内会の76世帯から賛同を得て設置を実現させた。設立に反対する人は一人もいなかった。

マニュアル作成へ

 自主防では、災害時の連絡体制の構築や初動マニュアルの作成、防災資機材の整備などの活動を想定している。ただ、目に見える防災対策以上に地域のつながりの大切さを加藤さんは強調する。「トップダウンや役員だけの活動にしたくない。あくまで住民同士で相談しながら、防災への共通意識を持って行動できる地域を目指したい」。本年度中に開く予定の町内会の勉強会では、防災に必要な手段や資機材などを自分たちで考え、話し合うところから始めるという。

 住民の命を奪うことになった阿武隈川の堤防はかさ上げされた。「堤防の整備は進んでも安心はできない。教訓を将来につなげなければいけない」。阿武隈川を見つめる加藤さんと三瓶さんの目には揺るぎない決意がにじんだ。