スズの薄膜を高品質化 東大と福島高専の研究グループ、技術開発

 
研究成果について説明する千葉講師(左)と小田准教授

 東京大と福島高専の研究グループは22日までに、スズの薄膜を半導体の基板上に作製する技術を開発した。作製した薄膜のスズは電気を効率よく通す性質を持っており、高速の情報処理と低消費電力を両立した情報通信機器への応用が期待される。

 技術開発につながった研究は、スズの結晶構造が基板上で変化することで、電気と磁気を効率的に変換できる性質を持った「トポロジカル物質」であることを実証したとして、論文が米科学誌「アドバンスド・マテリアルズ」に掲載された。福島高専からは千葉貴裕講師(32)と小田洋平准教授(35)が研究に参加した。

 使用したのは、常温以下で安定する「α(アルファ)―スズ」と呼ばれるスズ。構造が単純で埋蔵量も多く無毒のため、トポロジカル物質の原材料として期待されていたが、基板上に高品質で薄く作製するための技術が確立されていなかった。

 千葉講師によると、今回はスズの原材料を加熱、気化させ基板上に積み重なる過程で、結晶構造が圧縮されてトポロジカル物質に変化したという。そして、縦横約1マイクロメートル(マイクロは100万分の1)の半導体基板上に、厚さ10ナノメートル(ナノは10億分の1)のスズの膜を作ることに成功したという。

 実験は東京大のチームが進め、千葉講師らはスズの薄膜の電子状態の理論計算を行い、トポロジカル物質であることの確認を担当した。今後は実用化へ向け、スズの薄膜を利用したメモリーやトランジスタの開発を進めていく。

 千葉講師によると、政府が目指す超スマート社会実現に向け、情報通信機器の省電力化が課題となっている。その中、電子が持つ電気と磁石の性質を同時に活用して、より高性能な情報通信機器をつくる「スピントロニクス」への応用を目指し、「トポロジカル物質」の分野に注目。スズの結晶構造を変形させる今回の技術開発につなげた。

 千葉講師らは「トポロジカル物質研究の発展と、次世代の情報技術の土台となる研究成果になれば」と話している。