日展入選13回、相馬の81歳医師「心の中にある世界を描き続ける」

 
羽根田隆さん

 相馬市の医師羽根田隆さん(81)が、美術の全国公募展「日本美術展覧会(日展)」の洋画で2年連続13度目の入選に輝いた。羽根田さんは「心の中にある世界を描き続けたい」と語った。作品は29日~11月21日、ほかの日展入選作品とともに国立新美術館(東京都)で展示される。

 洞窟などに残る原始壁画を題材にした作品を多く手掛けてきた。今回の入選作品「狩人の谷」は、太古の人々が野馬を追う様子を表現した。躍動する馬の周囲には、弓を持つ人や両手を振り上げて威嚇する人影を描いた。抽象性を突き詰めた作品には神話的な世界観が漂う。

 日展入選を重ねる腕の持ち主だが、絵筆を持ち始めたのは50歳を過ぎてからだった。仙台の高校に通い、東北大医学部で学んだ。卒業後は、大学病院などに勤務して忙しい日々を送った。1989(平成元)年、古里相馬で医院を開業すると、幼友達などと触れ合う機会が増えた。次第に気持ちが和み、「趣味を持ちたい」と思うようになった。

 初めは地元の風景などを描いたが、イタリアにある古代キリスト教徒の地下共同墓地「カタコンベ」を訪れたことが転機となり、原始壁画を題材にした作品に取り組み始めた。薄暗い地下世界に潜り込むうちに、自らの中に眠る原始的な感性が呼び起こされるような思いがしたという。

 休診日や診察の合間をみて、画布に一心に向き合う。「原始人になったつもりで描いている」と笑う。太古の世界をテーマに選んで20年近くになるが、まだ心底納得のいく作品は生まれていない。「幼い孫の絵を見ると、素晴らしいと思える。そこには邪念がない。私も心のままに描いてみたい」。羽根田さんの創作意欲は尽きることはない。

日展で入選した羽根田さんの作品「狩人の谷」

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