避難者保険料、免除縮小 特例見直し、解除区域で政府検討へ

 

 東京電力福島第1原発事故による避難者らを対象に医療や介護の保険料などを全額免除している特例措置について、政府が早ければ2023年度に見直す検討に入ったことが5日、関係者への取材で分かった。国が自治体を通じて免除分を肩代わりしているが、避難指示解除区域は段階的に財政支援を縮小し、県外への避難者を含め、住民らに一部負担を求める。

 全額免除されているのは、国民健康保険や介護保険の保険料と、医療機関などで支払う自己負担分。事故発生から10年以上が経過し、政府内で特例見直しを求める声が上がっていた。今後、復興庁などが自治体と協議を進める。ただ住民の生活再建や産業復興は途上で、地元自治体が独自に継続を検討する可能性もある。

 一方、避難指示が解除されず、原則立ち入り禁止の帰還困難区域は特例を維持する方向だ。

 現在、全額免除の対象は避難指示が出された12市町村に住んでいた人で、その後戻らずに県内外に避難している人も含む。国民健康保険では年収約840万円以上の人を除くなどの収入要件が一部であり、県内に住民票がある世帯だけで20年度に約2万3000世帯の保険料を免除。介護保険は65歳以上が対象で、全国で約4万3000人(18年度)を免除した。65歳以上の人が21~23年度に支払う月額の介護保険料は全国平均で6014円。

 このうち避難指示の解除から一定期間が経過した区域では、保険料の全額免除を取りやめ、一部支払いを求める案が浮上している。医療機関にかかったり、介護サービスを利用したりした場合の自己負担分(1~3割)の免除は、その後に見直す予定。避難者らに配慮し、段階的に行い、変更前に1年程度周知期間を設ける考えだ。

 国による保険料などの全額免除は16年の熊本地震や東日本を中心に被害をもたらした19年の台風19号などでも例があるが、おおむね1年程度で終了している。

「帰還めど立ってからでは」延長望む声も

 東京電力福島第1原発事故による避難者からは、医療や介護の保険料免除など政府による特例措置の縮小について「いずれは終わると思っていた」と一定の理解を示す声もある一方、「住民帰還のめどが立ってからではないか」と疑問の声も上がった。

 双葉町からいわき市に避難する男性(71)は「支援が見直される時期が来るとは考えていたが、それによって帰還が妨げられることがあってはならない」と話した。

 男性は支援が縮小または、打ち切られることで双葉町ではなく、より充実した生活環境を選び、避難先や周辺の自治体に住民票を移す人が増えると予想。その上で「安心して帰還、生活できる環境整備が先。ある程度、帰還のめどが立ってから見直すべきではないか」と指摘した。

 浪江町からいわき市に避難している男性(74)は「逆境に遭って避難している中で免除の特例措置は大変ありがたい制度。できれば継続してほしいが10年が経過しており、縮小はやむを得ない部分もある」と理解を示した。

 南相馬市小高区から原町区に避難した自営業男性(48)は「10年の節目で、いずれは縮小方向になるとは思っていた。ただ、まだ避難の影響は続いている人もいる。あと5年くらいは延長してほしいところだ」と延長を望んだ。

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 原発避難者の特例措置 2011年3月に起きた東京電力福島第1原発事故による避難者の経済負担を軽減するため、政府は自治体などを通じ、国民健康保険や介護保険、75歳以上の後期高齢者医療制度の保険料のほか、自己負担分を全額免除している。全国健康保険協会(協会けんぽ)や企業の健康保険組合が加入者の医療費を免除した場合にも、国が財政支援している。