「現代の名工」漆工・大森茂光さん 曇り、しわなく均一輝き

 
「漆器は乾かし方が一番の腕の見せどころ」と語る大森さん

 卓越した技能を持ち、その道の第一人者とされる技能者「現代の名工」をたたえる本年度の厚生労働大臣表彰が5日発表され、福島県推薦7人、団体推薦1人の計8人が選ばれた。昨年の5人を上回り過去最多の受賞者数となった。全国で150人が選ばれた。

 県推薦の受賞者は、金属熱処理工の露木輝さん(55)=郡山市、小松製作所生産本部郡山工場、宮大工の石川吉登さん(71)=同、立川流石建、石積工の佐藤達好さん(76)=同、山好佐藤石材店、木製建具製造工の金沢良吉さん(70)=矢祭町、カナザワ建具店、表具師の宗像正さん(80)=郡山市、宗像表具店、畳工の吉田克浩さん(63)=同、吉田畳店、漆工の大森茂光さん(74)=会津若松市、大森漆器工房。また、全国鍍金(メッキ)工業組合連合会の推薦を受け、電気めっき工の斉藤伸寿さん(55)=郡山市、エム・ティ・アイ=も選ばれた。

 漆工 大森 茂光さん

 明治初期に建てられた蔵を工房に、漆工芸の道を歩んで約半世紀がたつ。「漆器の技術は『塗り』じゃない。乾かし方が一番の腕の見せどころ」。試行錯誤を重ねて手にした技術で、曇り一つ、しわ一つなく、均一に輝く漆器を生み出す。会津若松市の大森漆器工房の3代目。会津高卒業後、上京して大学に進んだが、23歳で帰郷し父に弟子入りした。

 会津漆器には上塗りの漆を塗った後、最後の研ぎ上げを行わない「花塗り」の技法がある。磨かなくても漆独特の柔らかい光沢を生み出すが、それだけにはけの跡や塗りむらを残さないよう高度な技術が要求される。「塗りじゃない」とは、卓越した塗りの技術を持っているからこその言葉だ。

 湿度に左右される漆の性質を見極め、作品に魂を吹き込んできた。その技術は広く認められ、平成に入るころ、作品が天皇即位の献上記念品に採用された。

 現在は県伝統工芸士会長も務め、後世への技術継承にも尽力する。「伝統技術を自分の代でとどめてしまうのはもったいない。どんどん新しい世代に受け継いでほしい」と、門をたたく人に技術の全てを惜しみなく伝授する。