阿武急設備点検、電車内安全対策急ぐ 乗務員、防犯スプレー携行

 
非常用ドアコックの説明をする阿武隈急行の担当者(右)=10日午後、伊達市・阿武隈急行梁川車両基地

 走行中の電車内で乗客が無差別に襲われる事件が全国で相次いでいることを受け、阿武隈急行や伊達署、県警鉄道警察隊は10日、伊達市の同社梁川車両基地で車両の防犯設備点検を行った。同様の事件はいつ、どこで起きるか分からない。逃げ場の少ない空間で乗客の安全をいかに守るか。県内の鉄道会社は模索しながら取り組みを進めている。専門家は「車内に異常がないか確認するなど、乗客も自らの身を守ることが大切だ」と指摘する。

 点検には同社社員や同署員ら約20人が参加。非常時に車両のドアを手動で開けるための「非常用ドアコック」や車内の異常を乗務員に知らせる「非常連絡ボタン」の使用方法、車外への避難方法などを確認した。同社の戸巻益雄運輸部長は「何かあれば慌てず、乗務員の指示に従って行動してほしい」と話し、山浦勉署長は「(乗客が無差別に襲われる事件は)模倣性があり、いつどこで起きるか分からない」と気を引き締める。

 各地で相次ぐ電車内の乗客襲撃事件。8月には都内の小田急線で乗客10人が刃物で切り付けられて負傷。10月には京王線で乗客が刺されるなどし、17人が重軽傷を負った。福島駅を日常的に利用する40代の会社員男性は「電車内で事件が起きることは考えたこともなかった。本当に事件が起きたら、どうしていいか分からないと思う」と話す。

 京王線の刺傷事件を受け、JR東日本仙台支社は警察と協力して駅構内や車内の巡回を強化。緊急の際は非常ボタンを利用するよう、車内放送で呼び掛けたりしている。

 阿武隈急行は小田急線の事件を受け、乗務員が防犯スプレーを携行するようになった。それ以前から、福島など3駅構内に防犯カメラを設置していて、一部車内にも試験的に防犯カメラを設置している。駅構内のカメラは今後、増やすことを検討しているという。

 一方で、抑止効果が期待される車内の防犯カメラは、県内を走るほとんどの在来線の車両に設置されていないのが現状だ。在来線への車内カメラの設置は、都市部でも関西では特急などに限られるケースが多い。特急に限定している南海電鉄(大阪)はカメラで写すのはデッキ部分で、客室は写していないといい、担当者は「プライバシーの観点から難しいと判断した」と説明する。

 可能になった乗客の手荷物検査についてある関係者は、人員などの点から「全てを検査することは難しい」と本音を漏らす。

 専門家「車内の異常、乗客も確認を」

 元山口県警の警察官で、危機管理に詳しい河本志朗日本大教授(危機管理学)は「事件は時と場所を選ばない。『首都圏で起きた事件だから、自分たちは関係ない』と思ってはいけない」と対策の必要性を強調する。

 その上で、鉄道事業者には防犯カメラの設置や車内の巡回強化、不審者への積極的な声掛けなど「各社の実情に合わせてできることがある。何ができるか、警察や消防、自治体などと一緒に考えていくべきだ」と指摘する。乗客に対しては「非常ボタンの場所や使い方を把握したり、車内で周囲を見渡して異常がないか確認するなど、自分で自分の身を守ることが大切だ」と話した。