天然トラフグ、相馬の「新たな顔」に 水揚げ量増、特産化へ加速

 
相双沖の天然トラフグで作ったてっさ(一人前)を手にする鈴木さん。「フグを味わう食文化を相馬に根付かせたい」と語る=相馬市・割烹やました

 「常磐もの」の"新たな顔"として注目を浴びる相双沖の天然トラフグ。水揚げ量が増加する相馬市では、その魅力にはまる市民が着実に増えてきた。だが、調理には専門の資格が必要となり、提供できる店が限られるなど課題も。地元漁協や観光協会などは、試食会の開催や供給体制の整備を通じて、特産化に向けた動きを加速化していく考えだ。

 「今年になって初めて食べて気に入り、3度も4度も店に来るお客さんもいる」。市内で天然トラフグを取り扱う割烹(かっぽう)やましたの2代目、鈴木光二さん(39)はそう手応えを語る。

 創業した約40年前から、他県産の養殖物などを使ってトラフグを出していた。しかし、近年は地元産がよく手に入るようになり、3年前から全量を相双沖のトラフグに切り替えた。

 「天然物は身の歯応え、出てくるだしが違う」と鈴木さん。てっさ(フグの刺し身)を作る際は、さばいた後、数日寝かせ、うま味ともっちりとした食感が出てくるのを待つ。繊細な味わいを損なわないよう、調味料にもこだわり、自家製のポン酢を添える。鈴木さんは「ポン酢で刺し身を食べることに慣れていない人もいる。フグを味わう食文化を相馬に根付かせたい」と意気込む。

 相双地区の港に水揚げされるトラフグの漁獲量は近年大幅に増え、相馬双葉漁協によると、9月に始まった今季のトラフグ漁では20トン超と全国トップクラス。漁が始まった2019年と比べると、10倍超だという。

 舞い込んだ「福」を逃すまいと関係者は知恵を絞る。市観光協会や同漁協などの関係者は20日、市内で会合を開き、天然トラフグ料理をお披露目する試食会を来年1月に開催することなどを確認した。関係者はトラフグをズワイガニに並ぶ冬の誘客の柱にしたい考えだが、課題も多い。有毒部位があるフグの取り扱いには、専用の調理器具の設置やふぐ調理師など資格者の配置が求められる。

 県によると、相双保健所管内で取り扱いを許可された飲食店などは35カ所にとどまり、資格取得を希望しても県内では試験が実施されていないのが現状という。

 この日の会合では、課題解決に向け、調理許可を得た加工施設で有毒部位を取り除いた「身欠き」にして、旅館などに提供する供給体制の整備や、県外で資格を取得するための支援などが必要との認識で一致した。今後任意団体をつくって取り組みを進める方針や、行政へ後押しを求めることなども確認した。

 会合に参加した若手漁業者の石橋正裕さん(42)は「ほかの県でも天然トラフグが取れれば、すぐに特産化を図るだろう。一刻も早くブランド化する必要がある」と力を込めた。

 天然トラフグを巡っては、県も「常磐もの」の"新たな顔"としてブランド力強化を図る方針を示している。