日本・千島海溝地震想定、対策急ぐ自治体 訓練や避難在り方検討

 
最大で19メートルの津波が予想されている南相馬市の海岸。減災に向け浜通りの自治体は対策を急ぐ

 政府が21日に公表した、日本海溝・千島海溝沿いで巨大地震が起きた際の被害想定で、県内では最大1200人が死亡するとの推計が出された。早期避難の徹底で犠牲は大幅に減らせるとの見通しも示される中、地震・津波からどう命を守るか、浜通りの自治体は対策を急ぐ。

 「震災の教訓をしっかりと生かし、油断することなく防災体制の強化を進めなければならない」。東日本大震災による津波で636人が亡くなった南相馬市。日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震発生時には県内最大の津波高19メートルが予想されており、市の担当者は危機感を募らせる。

 市によると、震災以降、市内の海岸には従来の6.2メートルから1メートルかさ上げした7.2メートルの防潮堤を整備。加えて、防潮堤の付近には防災林を置き、多重防御の対策を進めてきた。防災メール登録の簡素化や、無料通信アプリ「LINE(ライン)」を活用した災害時に情報共有できる仕組みの構築など、ソフト面での対策も図っている。

 ただ、課題となるのは住民の防災意識だ。市の担当者は「防災メールやラインなどの取り組みを行っていても、市民に浸透し切れていないのも事実」と指摘。その上で「これまでの防災対策を着実に積み重ねるとともに、市民の避難意識を高めるため情報伝達の仕方を見直したい」と強調する。

 今回の公表を受け、浜通りの一部自治体は防災計画の見直しなどを検討する。併せて、津波の浸水域に基づいた避難訓練や、要支援者の避難の在り方の検討などを進める方針だ。南相馬市同様、住民の防災意識向上を課題に挙げる自治体が多く、相馬市の担当者は「防災訓練などでの意識付けが重要」、いわき市の担当者は「速やかに避難につながる意識づくりを図っていきたい」と話す。

 内堀知事「備え適切に」

 県は防災計画の見直しを検討するとともに、防災計画を見直す市町村を必要に応じて支援する方針。内堀雅雄知事は被害想定の公表を受けてコメントを出し「迅速な避難が行われた場合、人的被害はわずかになるとされている。県民や事業者は日ごろからの備えを適切に行い、避難行動について考えてもらうことが重要だ」と呼び掛けた。

 福島県防災士会滝田理事長「自分ごとと捉え避難早く」

 住民側はどのような意識を持てばいいのか。県防災士会の滝田吉宏理事長(51)は「『東日本大震災の時に被害に遭わなかったので、これからも大丈夫』という考えは非常に危険」と警鐘を鳴らす。被害を「自分ごと」として捉え、できる限り早く避難することが命を守ることにつながると強調する。

 家に5日分ぐらいの非常食をストックしておいたり、家族で避難の際の行動をあらかじめ話し合ったりするなどの「自助」に加え、近所で避難を呼び掛け合う「共助」の態勢を構築しておくことも欠かせないとする。