福島医大、希少がん新薬治験へ 放射性物質合成、細胞を直接攻撃

 

 福島医大は早ければ春にも、放射性核種(放射性物質)の「アスタチン」を体内に投与してがんの一種「悪性褐色細胞腫」の細胞を放射線で直接攻撃する治療薬の治験に着手する。アスタチンを使った悪性褐色細胞腫の治療の治験に着手するのは世界初。実際に人に投与して薬の安全性や有効性を調べ、2026年ごろの実用化を目指す。医大が23日、明らかにした。

 医大先端臨床研究センターは、放射性物質を製造する装置「サイクロトロン」を使い、16年からアスタチンを製造している。悪性褐色細胞腫は副腎に発生し、国内の患者数が約300人とされる希少ながん。センターは、悪性褐色細胞腫に取り込まれやすい化合物とアスタチンを合成して放射性薬剤を開発した。体内に投与すると、がん細胞に近づき放射線で攻撃する仕組みで、動物実験など新薬開発のプロセスを進めてきた。

 センターによると、悪性褐色細胞腫を巡っては、放射性ヨウ素を使ってがん細胞を攻撃する薬剤がすでに実用化されている。しかし、アスタチンは放射線の中でも遮蔽(しゃへい)しやすいアルファ線を出すため、ヨウ素の場合と違って特殊な病室が必要なく、患者負担の軽減が期待されるという。半減期は7.2時間で、製造後速やかに投与する必要がある。

 センターは東日本大震災と東京電力福島第1原発事故を受け、放射線の負の影響を被った本県に放射線の医療分野での有効利用を進める拠点をつくろうと整備された。放射性薬剤の製造、合成、非臨床試験、治験を一貫して行える機能を備える。前立腺がんなど、悪性褐色細胞腫以外のがん治療薬の開発も目指している。

 センターで研究を担当している志賀哲教授(53)は「治験で薬の効果などを確認し、できるだけ早く実用化させたい」と話している。

 震災後の取り組みまとめた冊子作成

 医大は23日、先端臨床研究センターの震災後10年間の取り組みをまとめた冊子を作成したと発表した。アスタチンを使った治療薬開発の今後の展開などをまとめている。