双葉の伝承館、来館5万人 年度目標を達成、教育旅行が後押し

 

 東日本大震災・原子力災害伝承館(双葉町)の本年度の来館者数が目標の5万人を超えた。ただ「現在進行形」の本県の復興状況や複合災害の記憶と教訓を後世に伝え続けるためには、定期的な来館を促す取り組みが欠かせない。県や伝承館は、来館者の声に応じた展示の見直しや県外への情報発信などに取り組む構えだ。

 コロナで上半期低迷

 本年度の月別来館者(22日現在)は【グラフ】の通り。22日現在の来館者数は5万68人で、内訳は個人が2万8368人、団体が2万1700人(428団体)となっている。

 上半期は新型コロナウイルスの感染拡大で低迷したが、感染状況が落ち着いた秋以降に急増した。団体のうち、学校関連は1万6505人(220校)と約75%を占め、県は教育旅行先として伝承館が選ばれる傾向になったことが来館者数の底上げにつながったとみる。感染状況に左右される形にはなるが、着実な来館者の積み上げを期待する。

 意見聞き展示見直し

 開館当初、県外の来館者からは「事故の経過を再確認できた」「報道では分からない部分を聞けた」など肯定的な意見があった。一方、県民からは、原子力政策を推進した行政側の責任などに触れる資料の少なさに「インパクトに欠ける」などの指摘が相次いだ。

 県はこうした指摘を踏まえ、展示品の見直しに着手した。避難に活用できなかったSPEEDI(スピーディ、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)の解説など、原発事故の核心部を展示に追加した。

 リピーターからは「前より分かりやすい」「来るたびに異なる見方ができる」などの意見があったが「より深く知りたいと思った」といったさらなる展示の充実を求める声もある。県はこうした来場者の生の声を参考に、展示物を見直していく考えだ。

 「来館者離れ」に危惧

 県は、県立博物館や全国の伝承施設の運営実績を基に、来館者の目標を5万人に設定した。開館から2年目で達成したが、県と伝承館が持つ共通認識は「来館者離れ」への危惧だ。

 伝承館は、来館者の半数を占めるという県外からの誘客の促進に力を入れる。震災と原発事故から10年以上が経過して風化が懸念される中、本県の正しい姿を伝え続けるためには、県外での理解促進が欠かせないからだ。

 今月上旬、伝承館は初めての出張展示を長崎市の国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館で行った。今後も県外への情報発信を続ける予定で、担当者は「県外来館者のうち、約3割を占める首都圏向けの情報発信を強化したい」と語る。

 県は、次期総合計画(2022~30年度)の最終年度で来館者7万5000人の達成を掲げている。県の担当者は「伝承館は『現在進行形』で復興が進む双葉郡や本県の情報発信の中核拠点。魅力を高める努力を継続していく」(生涯学習課)と力を込めた。(報道部・折笠善昭)