被告、遺族に謝罪「大切な命失った」 猪苗代湖ボート事故初公判

 
遺影を手に取材に応じる豊田瑛大君の両親=27日午後、福島地裁前

 会津若松市の猪苗代湖で昨年9月、航行するプレジャーボートに巻き込まれ千葉県野田市、豊田瑛大(えいた)君=当時(8)=ら3人が死傷した事故の初公判。事故から約1年3カ月、ようやく始まった裁判でボートを操縦していたいわき市、会社役員佐藤剛被告(44)は遺族を前に「大切な命を失ったことは間違いない」とし、謝罪した一方、起訴内容については一部否認した。

 黒っぽいスーツに白いワイシャツ姿で出廷した佐藤被告。検察官が起訴状を朗読し認否を問われると、佐藤被告は弁護人から手渡されたメモを読み上げ、冒頭で事故を起こしたことを認め、「取り返しのつかないことをした。申し訳ない気持ちでいっぱいです」と謝罪した。

 事故が起きた状況について話が及ぶと、「前方や左右を注意していたが、浮いている被害者は全く見えなかった」「どうやったら(被害者を)発見できたのか、見落としがあったのか(実験などを通して)しっかり見つめ直したい」などと主張。弁護人も「予見可能性があったかは疑問に思う」とした。

 検察の冒頭陳述によると、佐藤被告は2007(平成19)年に小型船舶操縦士の免許を取得。事故が起きた昨年9月まで複数回、猪苗代湖の中田浜湾内を航行したことがあったという。事故当日は経営者仲間らと湖を訪れ、ボートを操縦。適切な見張りを怠って被害者らに衝突し、気付かないまま航行を続けたという。

 また検察は、佐藤被告と同じ方向に航行していた別のボートの操縦者が、佐藤被告が被害者をひいたのではないかと不安に思っていたことや、付近にいた別のボート操縦者が湖面に浮かぶ被害者に向かって航行する佐藤被告のボートを目撃していたことなども明らかにした。

 弁護側は「開示された証拠だけでは(予見可能性を)判断できない」として、追加で検証することなどを主張。佐藤被告がボートを操縦中に、湖面の被害者に気付くことができたのかできなかったのかなどが、今後の焦点となる。

涙拭う遺族見て天井を見上げる 公判中、佐藤被告は背筋を伸ばして姿勢を崩さず、検察の冒頭陳述などにじっと聞き入った。検察官が豊田瑛大君=当時(8)=の被害状況を説明し佐藤被告の対面に座る遺族が涙を拭うと、これまで正面を見つめていた佐藤被告は天井を見上げた。

 法廷を後にする際には遺族に向かって一礼した。

 「瑛大は戻ってこない」 両親出廷、癒えぬ悲しみ

 公判には、被害者参加制度で豊田瑛大君の両親が出廷した。閉廷後に取材に応じた両親は裁判が始まったことに安堵(あんど)しつつ、「本当に瑛大はいないんだな、戻ってこないんだなということを突き付けられた思い」と悲痛な胸の内を明かした。

 法廷では検察官の後ろに座り、約50分にわたってやりとりを見守った。検察官が冒頭陳述で瑛大君が亡くなった状況に触れると、ハンカチで目元を押さえる場面もあった。佐藤被告が法廷で謝罪したことは、瑛大君に報告するという。

 事故から約1年3カ月が経過して始まった裁判。母親は事故で両脚を失い、7度の手術を受けた。自身は義足で歩けるまでに回復したが「ずっと瑛大は(頭の中に)いて、つらいのに変わりはない。裁判が終わったとしても、変わらないと思う」。癒えぬ悲しみを抱えたまま、裁判の行方を見守っていく。