処理水の海洋放出、政府が行動計画 海外での風評被害調査ほか

 

 東京電力福島第1原発で発生する処理水の海洋放出方針を巡り、政府は28日、首相官邸で開いた関係閣僚会議(実行会議)で、風評対策や賠償に向けた行動計画を決定した。来年1月から海外で風評被害の実態調査を始めるとともに、県内や近県の事業者に対し、適切な取引が行われているかどうかの聞き取り調査を行う。水産物の風評被害に対応する300億円規模の基金の執行体制を本年度中に整えることも盛り込んだ。

 松野博一官房長官は会議で「対策を早急かつ着実に実行に移し、一人でも多くの消費者に(処理水の)安全性を理解いただき、漁業者をはじめ、地域の皆さまが安心して事業を継続、拡大できる環境を整えてほしい」と各閣僚に指示した。

 海外向け調査は、韓国や台湾、香港などの消費者を対象にインターネットで行い、処理水や本県産食品への認識を聞き取る。処理水の海洋放出を巡っては、中国や韓国が懸念を示しており、国際的な信頼性や透明性の向上を図るため、国際原子力機関(IAEA)と緊密に協力する。IAEAが第1原発に調査団を派遣し、来年中に安全性評価の中間報告書をまとめ、処理水の海洋放出前後にわたり中長期的に関わる体制をつくる。

 国内の適正取引の調査では、経済産業省資源エネルギー庁と復興庁が農林水産業や観光業などの事業者を対象に、風評による不当な買いたたきなどがないかを確かめる。

 農林水産省が継続的に実施している「県産農産物等流通実態調査」や消費者庁の「消費者意識の実態調査」の結果と掛け合わせ、風評の実態把握や要因分析に役立てる。

 新たに設ける300億円規模の基金では、需要が落ち込んだ水産物を冷凍して一時的に買い取るほか、漁業者団体によるネット販売も支援。政府は年度内に基金の管理団体を決定し、支援対象の漁業者団体を公募する方針だ。

 政府と東電は2023年春ごろに海洋放出を始める計画だが、水産物の買い控えや価格下落などの風評被害を懸念し、全国漁業協同組合連合会(全漁連)は放出に「断固反対」としている。原発での不祥事が続く東電が放出を実施することへの不信感も根強い。

 会議に出席した東電の小早川智明社長は福島民友新聞社などの取材に「関係省庁一致団結で取りまとめた行動計画を大変重く受け止めている」とした上で「さまざまな不適切事案を起こし、当社への信頼に懸念を生じさせてしまった。まずは事業者として信頼回復に努めていく」と述べ、計画通り23年春の放出開始を目指す考えを示した。