廃炉、新たな局面 22年にはデブリの試験的な取り出し

 

 東日本大震災、東京電力福島第1原発事故から10年の節目を迎えた2021年は、政府が第1原発で発生する処理水の海洋放出方針を決定するなど、廃炉に向けて新たな局面に入った1年でもあった。東電は今月、海洋放出関連設備を整備するための実施計画の審査を原子力規制委員会に申請した。政府も実行への行動計画を取りまとめるなど、海洋放出に向けた手続きが進む。一方、漁業者や自治体からは「説明が足りていない」との不満が噴出。「多くの人の理解を得る」とする東電には、不安や懸念に対する誠実な対応が求められる。

 難しい理解醸成

 「関係団体などの理解が得られるよう、丁寧に説明していくことが必要だ」。内堀雅雄知事は27日の定例記者会見で東電に注文を付けた。政府は方針を決定した4月13日以降、県内外で漁業や観光など、風評影響を受ける可能性のある業界などを対象に説明会の開催を重ねてきたが、県漁連や全漁連は「断固反対」の姿勢を崩していない。県漁連の野崎哲会長は東電の実施計画の認可申請を受け「われわれが(海洋放出に)反対している中で進んでいくのは残念だ。『淡々と進むことが非常に不満だ』と発信するしかない。説明を尽くしていない」と不信感をあらわにした。

 政府が示した行動計画には、韓国や台湾などを対象とした消費者意識の調査や国内での風評被害に関する実態調査、国際原子力機関(IAEA)による処理水の安全性評価などが盛り込まれた。県は風評対策について「理解を得られるかどうか、難しいところが残る」として、国内外の理解醸成に向けた行動計画の着実な実行を求める。

 水中ロボ調査へ

 来年は2号機原子炉格納容器での遠隔操作機器「ロボットアーム」を使った試験的な溶融核燃料(デブリ)取り出しが予定される。東電は回収したデブリを分析し、その後の作業を検討する方針で、重要な工程の一つとなる。1号機でもデブリ取り出しに向けた水中ロボットによる調査を来年1月中旬に実施する予定だ。1号機原子炉建屋内部の状況が明らかになることで、デブリ取り出しに必要な情報を得られることが期待される。

 県内原発の廃炉を巡ってはことし、福島第2原発でも動きがあった。県と立地町の楢葉、富岡両町は6月16日、全4基の廃止措置計画を了解した。廃炉の工程は4段階あり、完了まで44年かかるとされる。東電は第1段階として原子炉建屋の除染などを行っている。

 透明性まだ課題

 原発事故から10年が過ぎてもトラブルが相次いだ1年でもあった。福島第1原発では、3号機の原子炉建屋に設置していた故障した地震計の放置や廃棄物を保管するコンテナからの放射性物質の漏えい、多核種除去設備(ALPS)の排気フィルターの損傷などの問題が次々と明らかになった。福島第1廃炉推進カンパニーの小野明最高責任者は今月の定例会見で一連のトラブルについて陳謝し「作業における品質を高めるという認識を新たにし、対策を講じて信頼回復に努める」と述べた。

 30~40年かかるとされる廃炉に向けた重要な工程が来年に控える中、続発したトラブルは県民の信頼を揺るがせ、廃炉の足かせにもなり得る。処理水の海洋放出も含めた廃炉工程の進展に不可欠となる県民、そして国民の理解を得るため、東電には透明性の高い情報発信や社内体質の改善が必要だ。(報道部・鹿岡将司)