日常の再建、一歩一歩 2022年復興政策展望

 

 2022年で、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から丸11年となる。これまでの歩みで道路や港湾施設などの社会資本の整備は一段落しており、今後は被災地の日常生活のさらなる充実が求められる時期だ。本県の地域再生はさらに前に進んでいくのか。復興政策の展望を占う。

 大熊、双葉、葛尾が解除予定

 【復興拠点】原発事故で帰還困難区域とされた地域のうち、再び人が住めるように先行整備されているのが特定復興再生拠点区域(復興拠点)だ。復興拠点は六つの町村で計画が進められており、今年は大熊、双葉、葛尾の3町村で拠点の避難指示解除が予定されている。残る浪江、富岡、飯舘の3町村も23年春の避難指示解除に向け、整備が最終局面に入る。

 併せて、復興拠点から外れた地域の再生も徐々に動きだしそうだ。政府は、希望する全員が20年代に帰還できるよう必要な箇所を除染した上で、避難指示を解除する方針を決めている。今年は、各町村と住民の意向を把握するための作業に着手するとみられる。ただ、帰還意向がない場合の家屋や土地の扱いは定まっておらず、政府と県、町村による協議の行方が注目される。

 3月までに汚染土搬入完了

 【環境回復】県土再生に欠かせない除染などの環境回復は、一つの区切りを迎える。

 環境省は3月までに、帰還困難区域を除く除染で出た汚染土壌などについて、仮置き場から中間貯蔵施設(大熊町、双葉町)への搬入を終える計画を掲げてきた。おおむね実現する見通しが立っており、今年は中間貯蔵施設に集められた除染土壌などを「県外最終処分」するための政策に少しずつ軸足が移っていくとみられる。

 しかし、県外最終処分に不可欠とされる、土壌のかさを減らす対策などは進んでいない。飯舘村長泥地区のように、除染で出た土を用いた盛り土の造成や農作物の試験栽培が進む地域もあるものの、国民に幅広い理解を得られるような取り組みができるかどうかが鍵を握る。

 夏にも基本計画策定へ

 【国際教育研究拠点】政府は、福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想の司令塔として、浜通りに国際教育研究拠点を設置する。ロボットやエネルギー・脱炭素、創薬医療などを研究分野とし、国内外から数百人規模の研究者の参画を見込む。

 運営は、福島復興再生特別措置法に基づく特殊法人とする方向だ。政府は3月までに、施設概要や人員規模などの大枠を定めた基本構想をまとめる。その上で夏をめどに、具体的なプロジェクトを盛り込んだ研究開発基本計画を策定する。一部プロジェクトの先行実施も想定している。

 ただ、拠点の立地先については浜通りの自治体の思惑が錯綜(さくそう)しており、政府は県の提案を踏まえて決定する。通常国会での福島復興再生特別措置法の改正など、構想の具体化に向けた動きが進む1年になりそうだ。

 年度内目標300人達成に焦点

 【移住促進】原発事故で避難指示などが出た12市町村では、これまでの帰還促進に加え、21年度から始まった新住民の移住・定住への取り組みが加速するとみられる。

 政府は、初年度となる21年度に約300人の移住を目標に掲げており、あと3カ月で実現できるかが注目される。7月には、移住・定住の旗振り役として富岡町に設置された「ふくしま12市町村移住支援センター」が開所から1周年を迎える。

 しかし、移住者を迎え入れる取り組みは、全国の市町村が成果を競っている。本県の被災12市町村が知恵を絞り、新たな活力を地域に導き入れるための特徴ある試みを展開することが求められそうだ。

 水産業の風評防止対策支援

 【財政】復興庁の22年度当初予算案は、5790億円となっている。大規模なインフラ整備事業がほぼ完了したことを受け、21年度当初予算比で426億円(6.9%)の減。東京電力福島第1原発で発生する処理水の海洋放出方針を踏まえ、水産業などの事業者支援や風評防止対策に取り組むことが新規事業となっている。

 重点施策の中で「原子力災害からの復興・再生」の枠組みは全体の8割弱に当たる4452億円に上った。

 帰還困難区域のうち特定復興再生拠点区域(復興拠点)の整備に445億円、復興拠点外の地域の扱いを巡る調査事業には初めて14億円を盛り込んだ。国際教育研究拠点の推進事業には25億円を計上した。

 政府は、第2期復興・創生期間(21~25年度)にかかる事業費を計1.6兆円程度と試算。東電に求償する分を除くと21年度と合わせ0.9兆円程度が固まってきた。速やかで無駄のない事業展開が求められる。

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 12市町村の歩み

 東京電力福島第1原発事故で避難指示などが出された12市町村の2022年の動きなどを展望する。

 【田村市都路町】複合商業施設の建設が予定されているが、建設規模には見直し論もある。フライングディスク競技の公式施設を目指し、グリーンパーク都路の芝生化も進む。

 【南相馬市】小高区の園芸団地営農支援施設が、3月から一部稼働する。市内では工業用地が不足しており、小高区に新たな産業団地を整備する議論も進む見通し。

 【川俣町山木屋地区】地区特産の「山木屋在来そば」のブランド化や販路拡大を通じた地域おこしが進む。ライスセンターも完成予定で、施設を拠点にした農業振興に期待が掛かる。

 【広野町】ゼロカーボンのまちづくりが本格化する。1月中にも、町内の企業活動などの段階的な削減目標を盛り込んだ「将来ビジョン」を策定する見通し。

 【楢葉町】移住促進を重視した施策が形になる。春には廃業した旅館をシェアハウスとして運営するなど、移住希望者が気軽に町の雰囲気を体感できる環境を整える。

 【富岡町】約390ヘクタールの復興拠点全域で、立ち入り規制の緩和を予定している。復興拠点から外れた地区でも、主要道路沿いの建物の除染や解体が進められる。

 【川内村】ワイン醸造所に、収穫したブドウを醸造するまでの全工程を村内で完結できる体制が整った。3月ごろには、初の「川内産ワイン」がお目見えとなる。

 【大熊町】春の復興拠点の避難指示解除に合わせ、さまざまな施設の整備が続く。旧大野小には、産業振興の核として期待するインキュベーション施設が開所する。

 【双葉町】20日から復興拠点で準備宿泊が始まり、古里への帰還が始動する。6月以降の避難指示解除を視野に、8月には町役場仮設庁舎の業務開始を予定する。

 【浪江町】23年春の復興拠点の避難指示解除に向け、準備宿泊などの動きが活発化する見通し。町内の「陶芸の杜おおぼり」の復旧なども計画されている。

 【葛尾村】産業団地への企業立地を受け、従業員の移住定住の受け皿としての村営住宅を整備する。春に避難指示が解除される野行地区の復興拠点の再生も進む。

 【飯舘村】長泥地区に設ける復興拠点で、住民が帰還する「居住促進ゾーン」などの整備がヤマ場を迎える見通し。23年春の避難指示解除を目指す。