「経済展望2022」トップに聞く- 福島県内、景気回復明るい材料

 
写真右から日銀福島支店長の植田リサ氏、県銀行協会長の佐藤稔氏、県商議所連合会長の渡辺博美氏

 2021年の県内経済は新型コロナウイルスが収束せず、飲食業や宿泊業を中心に厳しい経営環境が続いた。2月に本県沖地震が発生し、製造業などが打撃を受けた。10月から県内でまん延防止等重点措置などが解除され、人出の回復とともに持ち直しの動きが見られたが、原油、原材料価格の高騰が中小企業の収益を圧迫している。22年はどのような1年になるか。日銀の植田リサ福島支店長、県銀行協会の佐藤稔会長(東邦銀行頭取)、県商工会議所連合会の渡辺博美会長(福島商議所会頭)の3人に聞いた。(聞き手 報道部長・中田和宏)

日銀福島支店長 植田リサ氏「生産、消費持ち直し期待」

 ―昨年の県内経済の総括を。

 「新型コロナウイルスの感染者数が増減の波を繰り返し、経済回復への期待が高まると、半導体不足や原油、原材料価格の高騰など次の負の要因が顕在化する苦しい1年だった。年初は感染拡大で外食や旅行などの対面型サービスを中心に消費が落ち込んだ。2月は本県沖地震が発生し、生産への打撃があった。夏には東南アジアで感染が拡大し、サプライチェーン(供給網)に影響が出て供給制約が広がり、製造業では生産調整が見られた。秋にまん延防止等重点措置が解除され、消費が回復してきたことは明るい材料だ」

 ―岸田政権が目指す賃上げの実現可能性や県内企業の課題は。

 「コロナ禍で業績が良くなった企業と悪くなった企業の格差が生まれた。同じ業種でも規模や業態、中心とするマーケットや顧客層などによって業績が異なる。まずは好調な企業が日本経済全体のことも考慮して賃上げを行ってほしい。従業員への分配が増えることで、経済が前向きな循環を続けることができる。そのためには、企業が利益を拡大することが大前提だ。企業は、デジタル化などの新しい分野を見据えた人材育成に力を入れてほしい」

 ―県内では2012(平成24)年4月から新たな上場企業が実質的に誕生しておらず、県や金融機関が株式上場を目指す企業を支援している。株式上場への期待は。

 「株式上場は知名度や信頼感の向上につながり、地域の雇用の拡大や定住者の増加が期待できる。県外や海外との取引が増えれば、本県経済にとってプラスになる。投資家を引き付けるような新たなビジネス、ほかの会社とは違う製品やサービスを提供する企業が育っていってほしい」

 ―今年の県内経済の展望を。

 「景気の改善傾向が鮮明化する1年になると見込む。生産はデジタル関連財の需要が非常に高く、部品の供給制約が解消するにつれ、生産拡大に向かっていく。消費は新型コロナの新たな変異株『オミクロン株』などの感染状況に左右されるが、さまざまな需要喚起策が展開され、人出の回復とともに持ち直すだろう。気掛かりは原材料価格の上昇。価格交渉力が相対的に弱い中小企業の収益に与える影響に注意が必要だ」

220104news403.jpg※日銀福島支店長の植田リサ氏

県銀行協会長 佐藤 稔氏「取引先再び成長軌道に」

 ―昨年の県内経済について振り返ってほしい。

 「新型コロナウイルス禍が2年目となったが、物流停滞や半導体不足、原材料価格の高騰などの新たな問題が出た。原材料価格の高騰は幅広い企業の業績に影響を与えている。一方、10月以降は人出が徐々に戻り、飲食業や宿泊業はこれまでとは少し違う景色が見えるようになってきたのではないか」

 ―昨今、金融機関では「伴走支援」がキーワードとなっている。新型コロナで影響を受けた事業者の支援にどう取り組むか。

 「昔のような単なる貸し出しだけが金融機関の役割ではない。伴走支援のためのコンサルティングなど業務が多岐にわたる。新型コロナ対応は資金繰り支援から本業支援に移ってきた。国の事業再構築補助金はビジネスモデルの転換などを支援する大型補助金で、新たな事業計画作りのサポートが重要になる。コロナ禍で傷付いた取引先を成長軌道に戻す手伝いをしたい。さらに近年はデジタル化や国連の持続可能な開発目標『SDGs』、温室効果ガスを実質ゼロにする『カーボンニュートラル』などの対応を地域の中小企業も求められている。そうした認識を共有し、次の10年に向かって変革していかなければならない」

 ―銀行を取り巻く経営環境は厳しい。地銀再編への認識は。

 「経営統合や業務提携が最終的な目的になってはいけない。大切なことは金融機関が地域にどう貢献するか。現在、県内の地銀では(現金や手形などを運ぶ)メールカーの共同化などで協力しているが、できるところは互いに競争し、切磋琢磨(せっさたくま)した方が顧客にとってプラスになる部分も多いのではないか」

 ―今年はどのような1年になってほしいか。

 「コロナ禍後の世界に踏み出したと実感できる1年になってほしい。経済活動が再開すれば、人手不足などが生じる可能性があり、その対応が必要になる。震災と原発事故から10年以上がたち、福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想などのプロジェクトも動きだしている。金融機関はさまざまな企業や組織に人材を出しており、復興に向けた橋渡し役になりたい」

220104news402.jpg※県銀行協会長の佐藤 稔氏 

県商議所連合会長 渡辺博美氏「経済再開地元の先頭に」

 ―昨年の県内経済の印象は。

 「新型コロナウイルス禍が想像以上に長期化している。グローバル化で世界経済がつながり、福島県だけが影響を受けないということはない。ワクチン接種の効果で状況は好転したが、今度は新たな変異株『オミクロン株』の感染を抑え込む必要がある。宿泊業や観光業、冠婚葬祭業などは仕事が減り、近い時期の回復を期待する楽観的な空気感はまだ感じられない。さらに原油や資材などの価格が値上がりした。簡単に価格転嫁できず、事業者は頭を悩ませている」

 ―県が展開している「県民割プラス」をはじめ、宿泊業や飲食業などの需要喚起策の効果は。

 「県民割プラスで県内循環型の経済となり、地域の魅力も再発見できる。人気の旅館・ホテルはあっという間に予約で埋まった。一方、リーズナブルな値段で利用できる宿泊施設はあまり恩恵を受けられていない部分もある。飲食業はまだ大半の企業が忘・新年会を開催しない状況にあり、このままでは干上がってしまう。感染状況を見極めながら、春には歓送迎会開催の動きが広がってほしい」

 ―経営の後継者不足が課題だ。事業承継や企業の合併・買収(M&A)についての考えは。

 「問題は今のビジネスが時代に合っているかどうか。今後の成長が見込めなければ、経営者は自分の子どもにも後継を託さないで廃業を決断する。M&Aはスケールメリット(規模拡大効果)があるが、会社の歴史や伝統を重んじて踏み切らないケースも多い。商工会議所は事業を継続できるよう相談に対応し、ビジネスモデルの転換などを伴走型で支援したい」

 ―今年への期待は。

 「サッカーJ3にいわきFCが昇格し、福島ユナイテッドFCと県内2チームが切磋琢磨(せっさたくま)することになる。大相撲では福島市出身力士の若隆景、若元春、若隆元の大波3兄弟が活躍中だ。今年は経済活動だけでなく、スポーツや祭り、イベントを本格的に再開できる1年になってほしい。福島県には春から夏にかけて多くの祭りがあり、地元経済団体が先頭に立って盛り上げたい。新型コロナ禍からの明るい兆しが少しずつ見えてきた。収束後の青写真を描きながら、これまでため込んできたエネルギーを使えるようにしたい」

220104news401.jpg※県商議所連合会長の渡辺博美氏