廃炉産業、福島県内に確立を 東電社長、地元から技術開発へ

 
(右から)小野、小早川、高原の各氏

 東京電力の小早川智明社長は5日、福島民友新聞社の取材に応じ、福島第1、第2原発の廃炉を通じて本県発の廃炉産業の確立を目指す考えを示した。地元企業の参画を促す考えで「廃炉に欠かせない資機材の製造を地元から進めていく」と述べた。

 廃炉作業を巡っては、規模が大きくスピード感が求められたこれまでの工程では大手建設会社に作業が集中する傾向にあった。ただ、過酷な事故を起こした第1原発での今後の工程では既存の資機材を原発の形状に合わせて改造したり、耐震性を高めたりすることなども想定されるため「プラントの近くで現物を確認しながら技術開発につなげることが本来の姿だ」と強調した。

 具体的には、燃料を保管する「キャスク」と呼ばれる容器など廃炉に必要な資機材の製造や放射性廃棄物の減容化などを挙げた。地元企業や先端技術を有する県内外の企業と共に設立する共同事業体を念頭に「地元企業にも入ってもらいながら、産業の育成につながればと思っている」と述べた。大学など研究機関や企業に対しても、共同研究について提案を続ける。

 東電はことし、第1原発2号機で原発事故後初めての溶融核燃料(デブリ)の試験的取り出しを計画しており、取り出しの前には楢葉町の楢葉遠隔技術開発センター(モックアップ施設)で実践的な試験を想定している。地元から「廃炉の実態が分からない。試験から研究者や地元の住民が見学できる機会がほしい」との要望があると説明し、小早川社長は「新型コロナウイルスの影響で視察の受け入れが難しかったが、(廃炉現場の)中外を含めて見ていただき、オペレーション(対応)を改善していくことも重要だと感じている」と廃炉作業の「見える化」にも取り組む姿勢を示した。

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 廃炉カンパニー小野氏「デブリ処分、技術と社会的影響両面で」

 東京電力の小野明福島第1廃炉推進カンパニー最高責任者は5日、福島第1原発事故で発生した溶融核燃料(デブリ)の処分の在り方について「技術的見地と社会的影響の二段構えで検討すべき」との認識を示した。

 デブリを巡っては、原発事故から10年以上が経過しても性状を含め未解明な部分が多く「廃炉の最難関」と位置付けられる。東電はことし、2号機で試験的な取り出しを予定しており、ごく少量を採取し、日本原子力研究開発機構(JAEA)で分析する計画だ。

 小野氏は「技術的にデブリがどういうものか分かっていない中、処分の検討はできていないのが現状」と述べた。2020年代半ばには本格的なデブリの取り出しに着手する予定だが、処分の方針が決まるまでは第1原発構内で保管する必要があるとした。

 一方で、試験的取り出し以降、デブリの性状の解明が期待されることから「情報を活用しながら、デブリの性状が分かる中で処分の議論はしていくべきだと思っている」とした。

 高原復興本社代表「自治体に即した支援」

 東電の高原一嘉福島復興本社代表は、被災地ごとに「復興のステージが異なっている」との認識を示した上で「それぞれの自治体の考えに即した支援を行いたい」と述べた。

 高原氏は自治体からの要望が、草刈りや片付けなどから街づくりなどの復興支援へ移っていると説明。「僭越(せんえつ)だが、東電の知見を(地域の復興に)役に立てられれば」と語った。

 東電・小早川社長「処理水の安全性発信へ」

 東電の小早川智明社長は5日、福島第1原発で発生する処理水の海洋放出方針を巡る対応などについて考えを語った。

 ―処理水の海洋放出に関する設備の整備に向けた計画を提出したが、地元の理解は進んでいない。理解醸成へどう取り組むか。
 「広く社会、世界の皆さんが処理水の放出をどう感じているかが一番重要。安全性をどう証明するか、国とも連携しながら国際的な対応も含めて透明性の高い情報発信に努める」

 ―昨年はトラブルが相次いだ年になった。理解醸成にはトラブルを起こさないことが大前提となる。
 「構内の老朽化など施設の全貌(ぜんぼう)の見える化に向けて取り組んでいる。設備は『不健全で壊れる可能性がある』という視点を念頭に置き対応を見直していく」

 ―海洋放出を巡る風評への賠償をどう考えるか。
 「風評を起こさないことが何よりも重要になるが、あらかじめ関係者に懸念の中身を伺う中で対応していく。風評を発生させないために『事前に策をどれだけ講じられるか』という意見が多い印象だ」