原発事故で消滅危機...野行の宝財踊り、高校生「取り戻す」

 
「野行の宝財踊り」の復活に向け練習に励む詩菜さん(右)らふたば未来学園高演劇部員たち=昨年12月20日、広野町

 葛尾村野行(のゆき)地区に約100年前から伝わる伝統芸能「宝財(ほうさい)踊り」が東京電力福島第1原発事故による中断を経て、ふたば未来学園の高校生らの手でよみがえることになった。中心となったのは地区出身で、現在はいわき市に住む同高3年の半沢詩菜(うたな)さん(18)。「古里の伝統を取り戻し、双葉郡を元気にしたい」と、所属する演劇部員らに呼び掛け、踊り手を確保した。葛尾の大人たちもサポートする「復活上演」は2月20日を予定している。

 「ホーホー。ソーレ!」。復活上演まで2カ月となった昨年12月20日、部員らは踊りの練習に励んでいた。宝財踊りは、住民が「棒振り」や「博徒」などの役に扮(ふん)して舞い、地区の繁栄を祝う行事だ。部員らは、役に応じた道具を持ち、右足を上げては3歩進む独特の踊りを繰り返した。

 野行地区では毎年10月の第4日曜日、住民らが集会所に集って踊りを楽しんだ。踊りは、集落の人々の絆を結び付ける役割を担っていた。しかし、原発事故による避難で住民は散り散りに。地区そのものも帰還困難区域になったため、踊りは後継者の不在による消滅の危機に立たされていた。

 そのような中、詩菜さんは高校の教育プログラムの一環で故郷について学んでいくうちに「古里を活性化させたい」と宝財踊りの復活を志し、仲間を募った。郡山市に避難する保存会長の半沢富二雄さん(68)も協力した。昨年10月、演劇部員らと会った富二雄さんは「若い感性で宝財踊りを生まれ変わらせてほしい」と呼び掛けた。伸び伸びとやってほしいとの言葉に、詩菜さんは勇気づけられたという。

 支援の輪も広がった。踊りの復活の場は、村の再興に取り組んでいる一般社団法人葛力創造舎が整えた。「若い人が踊りを復活させるなら」と、部員たちが江戸時代から現代に至る村民の暮らしや文化を村内各地で演じ、最後に宝財踊りを披露する劇仕立てにしたらどうかとアドバイスした。

 劇の名前は踊りの掛け声に合わせ、「宝宝宝(ほーほーほー)」とした。演出はタイ・バンコクを拠点に活動する演出家篠田千明さんが担当することが決まり、2月20日の本番に向け着実に準備が進められている。

 野行地区は震災から11年を迎える今春、特定復興再生拠点区域で避難指示が解除され、ようやく復興のスタートラインに立つ。同法人の下枝浩徳代表理事(36)は「葛尾の記憶を後世につないでいきたい」と力を込める。詩菜さんは「楽しんで踊りたい。多くの人に見てほしい」と期待に目を輝かせる。(渡辺晃平)

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 野行の宝財踊り 1915(大正4)年、野行地区を開墾した住民らにより始まった。昭和初期に最盛期を迎え、一時は途絶したが、有志が83年に保存会を設立して復活した。着物やわらじなどを身に着けた10人の踊り手と2人の笛方で構成し、円を描くように1列となって踊る。葛尾村の無形民俗文化財となっている。