【改正少年法】裁く側に/裁判員、私に務まるのか 対象引き下げ

 
裁判員裁判を模擬体験する生徒。実際の裁判で人を裁く可能性も出てくる=2020年11月、福島地裁

 現役の高校生が法廷で裁判員を務め、事件を審理する―。来年以降、そんな状況が現実になるかもしれない。裁判員に選ばれる年齢は現在「20歳以上」だが、少年法改正に伴い「18歳以上」に引き下げられるからだ。

 「私たちが他人の人生を決めていいのだろうか。無実なのに有罪にして、その人の人生がおかしくなったらと思うと、責任が重大」。福島市内の高校に通う3年の女子生徒(18)は戸惑いの声を上げる。裁判のことは授業で少し学んだ程度で、ほとんど知識がない。「社会のルールとかもよく分からないのに...」。裁判員を務めてみたい気持ちはあるが、不安の方が大きい。

 説明なく戸惑う学校

 裁判員は、衆院選の有権者からくじで選ばれる。対象年齢の引き下げは、選挙権年齢を18歳とした2015(平成27)年の公選法改正時にも検討された。その際は18、19歳が人を裁くことに異論が出たため、公選法に付則を設けて対象年齢を20歳以上に据え置いた。

 ところが、今回の少年法改正に合わせ付則が削除され、裁判員の対象が18歳以上に引き下げられた。裁判員の年齢変更について国会で目立った議論はなく、県内の法曹関係者も「いつの間にか変更されていた」と驚く。

 心理的な負担だけではない。最高裁によると、裁判員裁判の平均実審理期間は8.7日。500日を超えるものもあり、裁判員に選ばれれば全てに参加しなければならない。学業が理由の辞退は認められているものの、辞退率の高さを問題視する声もある。

 学校現場も戸惑う。県内のある教育関係者は「(年齢の引き下げは)報道で初めて知った。説明もなく、どうしていいのか分からない」という。裁判員を務める際の休みの扱いなどについても、今後詰めていくことになる。

 福島地裁では現在、毎年秋ごろに裁判員候補者名簿を作成しており、翌年1月1日時点で20歳以上の人が名簿に掲載される。現行のままなら、1月1日時点で18歳になっていないと名簿に掲載されないため、高校在学中に裁判員を務める可能性は低いが、卒業した年に選ばれることはあり得る。

 若い感覚、反映に期待

 今回の変更について、裁判員制度の設計に関わった四宮啓弁護士(東京)は「裁判に多様な意見が反映され、質の高い公正な裁判が実現できる。懸念点はない」と言い切る。さまざまな年齢層の被告人がいるのと同様に、「裁く側」にも若い感覚が反映されることが必要と指摘する。

 戸惑う高校生や学校現場の声に対し、四宮弁護士はこう期待を寄せる。「辞退せず、若者らしい感覚で臨んでもらうことが一番大切。政治参加と司法参加はともに『公共への参加』で、これらを統合した主権者教育を充実させることが必要だ」

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 裁判員制度 殺人や傷害致死などの重大な刑事事件の裁判に、一般市民が加わる制度。2009(平成21)年5月に始まった。選挙人名簿を基に裁判員の候補者名簿が作られ、事件ごとに候補者が選ばれる。70歳以上や病気、介護などを理由に辞退することも認められている。