原発事故訴訟で初の最高裁弁論 国の責任、夏にも統一判断へ

 
横断幕を掲げて最高裁前を歩く原告ら=15日午後1時15分、最高裁

 東京電力福島第1原発事故で避難した住民らが国と東電に損害賠償を求めた集団訴訟で、千葉訴訟の上告審弁論は15日、最高裁第2小法廷(菅野博之裁判長)で開かれ、結審した。同種の集団訴訟では初の最高裁弁論。最高裁は5月中旬までに群馬、福島、愛媛の各訴訟の弁論も開き、今夏にも国の責任の有無について初の統一判断を示す見通し。

 4件の上告審は高裁判決で判断が分かれた国の責任について審理される。主な争点は、国の地震予測「長期評価」を基に、国が事故前に福島第1原発を襲う大津波の発生を予見し、東電に安全対策を取らせる義務があったかどうか。

 千葉訴訟は2013(平成25)年に提訴された。一審千葉地裁は東電の責任を認める一方、国の責任は否定。二審東京高裁では国の責任も認めた。

 原告側は弁論で、長期評価を基に巨大津波を予見し、建屋などの水密化や防潮堤設置などの防災対策を講じれば事故を回避できたと主張。「原子力事業者に対する規制権限のある国の対応には合理性がなく、事故回避のための規制は国にしかできない重大な責務だ」とした。

 国側は、専門家の間で意見が分かれるなど長期評価の信頼性は低かったなどと主張。加えて「仮に国が規制権限を行使し防潮堤を設置したとしても、敷地の浸水による事故を防ぐのは不可能だった」と述べた。

 最高裁は、4件についての東電の上告は退けており、同社の責任と原子力損害賠償紛争審査会(原賠審)が賠償基準として示した「中間指針」を上回る賠償額は確定している。

 初の弁論が行われたこの日は、多くの人が傍聴券を求めた。最高裁によると、20席の一般傍聴券に対して100枚の整理券を交付した。

 原告代表「忖度せず国の責任認めて」

 91歳の原告の言葉が最高裁の法廷に響いた。上告審弁論で原告の代表として意見陳述した小丸哲也さんは「原発事故で先祖代々の家も屋敷も田畑も山林も汚染され、人生を懸けて築き上げてきたものを80歳にして全て失った。こんな不条理がありますか」と訴えた。

 浪江町から千葉県に避難し、現在は横浜市に暮らす。浪江の自宅は帰還困難区域にあり、原発事故から11年1カ月が経過した現在もなお、除染は行われていないという。車いすで入廷し、約5分間、堂々と意見陳述。「最高裁には行政に忖度(そんたく)せず、重大事故を起こした国の責任を認めてほしい」

 閉廷後、会見した原告側の滝沢信弁護士は「国の責任を司法が明確に認めることで直接の加害者であるという責任を果たさなければならなくなる。大変苦しい思いの人たちに希望の光を与える判決になると確信している」と強調した。