酒造り見通し立たず 震度6強地震1カ月、金水晶で仕込み蔵半壊

 
酒米を蒸す窯場の損傷箇所を指さし「今秋からの酒造りはピンチだ」と不安を口にする斎藤社長=福島市・金水晶酒造店

 福島県沖を震源に最大震度6強を観測した地震の被害は、5月に全国新酒鑑評会を控える日本酒業界にも及んでいる。金賞受賞の常連でもある福島市の金水晶酒造店では、明治時代に建築された仕込み蔵などが半壊、酒造りに使う複数の設備が損傷。地震から1カ月が経過しても先行きは見通せず、創業127年を迎える福島市唯一の酒蔵は危機に直面している。

 「ここまでひどいとは分からなかった。今秋からの酒造りはピンチだ」。同社の斎藤美幸社長は表情を曇らせる。地震直後、一部の酒瓶が割れるなどしたが被害は軽微だとみていた。しかし次第に被害の全容が明らかになった。

 酒造りの工程で酒米を蒸す窯場にひびなどが入り、日本酒の元になるもろみを搾る自動圧搾機が故障。いずれも使えなくなった。蔵自体も東日本大震災で被害を受け、応急処置を施した箇所を中心に再び被災。土壁が崩れ、縦揺れの影響で柱も傾いた。被災状況を確認してもらった1級建築士からは「また次の地震が起きれば、危険な状況だ」と指摘を受けた。

 不幸中の幸いは2021酒造年度(21年7月~22年6月)の酒造りが一段落していたことだ。震災の教訓から酒の入ったタンクは固定していて被害を免れたため、商品の出荷にもほとんど影響がなかった。地震前日には県春季鑑評会の結果が発表され、出品酒が吟醸酒の部で最高賞の知事賞を獲得。斎藤社長は「天国から地獄。お祝いムードは吹き飛んでしまったが、天災なので仕方がない」と受け入れる。

 21酒造年度の日本酒の出来栄えを競う全国新酒鑑評会で本県は都道府県別の金賞銘柄数で9回連続の「日本一」が懸かる。金水晶は金賞の審査が行われた過去10回で9回金賞に輝いている県内でもトップクラスの酒蔵の一つ。こちらにも無事に出品できる見込みだというが、秋からの日本酒の仕込みに復旧が間に合うかは分からないという。

 1895(明治28)年に創業し、第2次世界大戦中は企業整備に伴い休業を強いられた金水晶。現在は新型コロナウイルスの感染拡大で日本酒の需要減という逆風にもさらされている。それでも、斎藤社長は「戦中以来の休業は避けたい。福島で酒造りをしている誇りを胸に、何とかこのピンチを乗り越えたい」と蔵の存続へ前を向く。

 県内3176事業者被災額169億円

 県の集計によると、県内中小企業などの被災状況は1日時点で3176事業者の約169億8700万円に上る。現在も調査を継続しており、今後さらに被害額が膨らむ可能性がある。