目指せ風力発電産業の集積地 いわきから国産部品供給

 
風力発電の土台となるタワーを生産する工場を案内する会川氏。さらなる増産も視野に入れる=いわき市

 いわき市を風力発電産業の集積地にしようとする動きが進んでいる。福島県沖の洋上風力発電計画は頓挫したが、地元企業が地道に部品製造の仕事を増やしてきた。政府が風力事業強化の方針を打ち出し、市も設備メンテナンス関連の制度構築に動いており、産業集積に向けた追い風が吹いている。(大内義貴)

 ◆◇◇契機は洋上実験

 きっかけは、国が2013年から本県沖で進めた浮体式洋上風力発電施設の実証実験だった。原発事故後の再生可能エネルギー転換に向けて本県での風力事業育成方針を示し、3基の大型施設を設置した。

 県も推進姿勢を打ち出したことで、いわき市で製造業を中心に参入の動きが目立ち始めた。産業集積化を目指そうと、企業約10社が18年8月に「いわきウィンドバレー推進協議会」を設立。しかし政府が20年に本県沖の設備を撤去する方針を固めたことで、産業化への道のりは厳しくなると思われた。

 ◇◆◇2万5000個の部品

 政府の方針決定後も協議会を構成するいわき市の企業は風力関連部品の製造・生産を続けた。協議会の会川文雄会長(74)が経営する会川鉄工は原発用の遮蔽(しゃへい)容器などを造る鉄工メーカーだが、風力発電の土台となるタワーを製造するため国内初の専門工場を設け、全国200カ所以上にタワーを提供してきた。

 風力発電では1基につき2万5千ほどの部品が使われるとされ、企業の参入機会は多い。東北ネヂ製造は風車で使用するボルトを提供しており、別の部品製造も視野に入れる。いわきエフアールピー工業は羽根の部分、江名製作所はプロペラ軸の本格生産への準備を進めるなど、各企業が強みを生かしている。

 協議会によると、日本は原子力中心の産業構造だったことから風力関連で国産可能な部品は数%にとどまり、世界をみれば欧州や米国の発電機メーカーが中国や韓国の認証工場で大量に部品をつくる供給網が構築されている。そのため日本で風力発電の建設計画があっても製造から部品交換、メンテナンスを含め海外頼みであり、大型の設備となればその傾向が顕著だ。会川氏は「海外頼みでは産業は育たない」と提起する。

 ◇◇◆協議会加盟増加

 こうした中、政府は洋上風力に関し40年までに最大4500万キロワットに増やし、部品などの国内調達率を60%まで引き上げる計画を定めた。ただ、阿武隈地域など県内で進む風力発電計画のほとんどは内陸であり、会川氏は「陸上風力でも同様の計画策定が必要」と訴える。

 いわき市は、同市に拠点を設ける風力発電施設メンテナンス大手の北拓(北海道旭川市)と、地元企業にメンテナンスのノウハウを提供する協定を結んだ。市内企業の風力産業への参入を促すため、メンテナンスに必要な技術や知識を認証する独自の制度を具体化し、本年度から本格運用を始める計画だ。

 会川鉄工はこの動きを好機と捉え、タワー工場の増設計画を進めるほか、洋上風力に対応するために沿岸部への生産設備の設置も視野に入れる。協議会には市外、県外の企業も加盟するようになり、会川氏は自信をみせる。「参画しようとする企業はこれから数年以内に100社を超えるだろう。風力産業集積化の流れは加速する」