相馬唯一の豆腐店廃業へ 地震で全壊「もう少し頑張りたかった」

 
地震で被害を受けた店内で片付けをする五十嵐さん(右)と妻のよし子さん

 福島県相馬市で豆腐の製造販売を手がけてきた五十嵐豆腐店は、本県沖を震源とする3月の地震で建物が被害を受けるなどしたため、廃業を決めた。市内唯一の豆腐店で市民に長く親しまれてきた。店主の五十嵐修一郎さん(71)は「75歳までは続けたかったのだが、もう区切りを付けるしかない」と唇をかむ。

 東日本大震災や昨年2月の本県沖地震の影響を受けながらも営業を続けたが、3月の地震では建物が傾き、全壊との判定を受けた。五十嵐さんは「もうこの年齢で直すのは無理だ」と悔しさをにじませる。

 市役所近くに店を構える。五十嵐さんによると、明治時代にはすでに営業していたという。50年ほど前には市内に10軒近くあった豆腐店が、後継者不足などで店をたたむ中、五十嵐さんは妻のよし子さん(67)と店を切り盛りし、木綿豆腐や油揚げ、焼き豆腐などを製造し販売してきた。

 豆腐はおなじみの青いパッケージに入れられ、小売店で販売され、市内や新地町の学校給食で子どもたちに提供されてきた。伝統行事「相馬野馬追」では、五十嵐さんの豆腐が、相馬中村神社で行われる出陣式で使用され、縁起物の勝栗とともに総大将の膳に並んだ。

 地震から1カ月が過ぎたが、今も五十嵐さんはよし子さんと店内の片付けを続けている。「もう少し頑張りたかった。やめるときにはお客さんに感謝の気持ちを伝えたかったが、何もできず、それが心残りだ」と話した。