ランの共生菌を解明、福島大客員准教ら 「植物保全につながる」

福島大共生システム理工学類客員准教授の山下由美さん(63)らは、ラン科の植物「ショウキラン属」と共生する菌類が、腐った木を食べる「木材腐朽菌(もくざいふきゅうきん)」であると解明した。木材腐朽菌はこれまで植物と共生することが知られておらず、山下さんは「ランは菌類と共生することで増えていく。今後の保全につながる」と期待する。
研究成果をまとめた論文は日本菌学会が刊行する学術誌「マイコサイエンス」に掲載された。その中から将来にわたって国際的に高い評価が期待される論文に授与される本年度日本菌学会平塚賞を受賞した。論文の筆頭著者である山下さんは、56歳で福島大大学院共生システム理工学研究科博士後期課程に入学し、在学中に論文を書いた。「学生でも頑張ったら(論文で)賞を取れる。頑張ってほしい」と後輩にメッセージを送る。
山下さんは大阪府生まれ。北海道大大学院で薬学修士学位を取得。製薬会社での勤務を経て、神戸大大学院医学研究科に研究生として入学すると、医学博士の学位を取得した。研究者である夫が奥羽大に赴任したのを機に本県に移り住んだ。
植物が好きで、県内で希少植物の写真を撮る活動をしていた際、絶滅危惧種を調査する県のチームに加わることになった。そこで福島大共生システム理工学類教授の黒沢高秀さん(56)と出会い、植物の研究を始めた。今年3月に福島大大学院の課程を修了し、二つ目の博士号となる理工学博士の学位を取得した。
山下さんは「例えば森の中でショウキランの近くに朽ちた木があっても、片付けてはいけないということが分かる」と研究の意義を語る。黒沢さんは「菌類と植物の両方に精通した山下さんだからこその成果。論文の内容は専門家にとっては衝撃」とたたえる。
ただ、ランと共生する菌類のほとんどが解明されていないという。「絶滅危惧種のランも多く、共生する菌類が分かれば増やす方法も分かるかもしれない。ランによって共生する菌類は違う。奥が深いでしょ」と山下さん。大好きな植物の保全に向け、研究熱は冷めない。
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