「近づけない」捜索難航 本紙記者ルポ、漁業と観光の町...騒然

 
行方不明者の捜索などで人が慌ただしく行き来するウトロ漁港。船舶事故調査官の会見などが行われた=25日午後5時15分ごろ、北海道斜里町

 海鳥が飛び交う港にヘリコプターの音がけたたましく響き、上空には海上保安庁の航空機が飛ぶ。北海道・知床半島沖で乗客乗員26人を乗せた観光船が遭難した事故が起きた現場に近い斜里町のウトロ漁港は、騒然とした雰囲気に包まれていた。発生から48時間以上が経過。「とにかく見つかるまで捜してあげたい」。25日も必死の捜索活動が続いた。

 漁業関係者らは交代で船を出し、発生翌日から捜索に協力している。ただ、25日は波が高くなり、座礁する恐れもあったため捜索には数隻しか協力できなかったという。「藻がついた岩は見えづらいし、10年以上の経験があっても怖くて近づけない場所がある」。ウトロ漁港の40代漁師男性は捜索の困難さについて語った。

 知床は2005(平成17)年に世界自然遺産に登録された。ウトロ漁港には漁船とクルーザーが停泊し、漁業と観光の町として栄えている様子がうかがえる。港周辺にはクルーズ観光の看板が立ち並び、例年は春の大型連休を前に観光客が徐々に増えてくる時期だが、重大事故の発生で観光地の雰囲気は一変した。

 事故で消息を絶った観光船の会社の社長を知る地元の男性によると、この社長は「今年もコロナ禍で観光客が少ないのかな」と心配そうに話していたという。

 事故の原因調査を開始した運輸安全委員会の調査官はウトロ漁港で報道陣の取材に応じたが、「まだ原因は分からない」と繰り返した。「船体が見つかってくれれば...」。願うようにそう口にした。(報道部・坂本龍之)