新地の海産物...食卓に、地元漁師の妻が商品企画・販売会社を設立

 
印象的なパッケージに入ったタコシウマイを持つ渡辺さん。背後の漁船は、夫登さんが乗る「菊丸」=新地町・釣師浜漁港 、写真右下は、浜福第1弾の商品となるタコシウマイ。地元産タコのうまみと歯応えが楽しめる

 第1弾は「タコシウマイ」

 新地町の漁師の妻が、地元の海産物を多くの人に食べてもらいたいと、商品企画・販売会社「浜福」を設立した。同社第1弾となる商品は、地元の漁港で水揚げされたタコのうまみと食感を楽しめる「タコシウマイ」。代表の渡辺京子さん(66)は「浜の食材を生かして、地元を活気づけたい」と意気込んでいる。

 渡辺さんは町内出身。生家は農家を営んでいて海とは縁遠かったが、漁師の登さん(69)との結婚を機に漁業に携わることになった。新鮮な海の幸の魅力を改めて知った渡辺さんは、町内の加工施設で登さんが水揚げしたイシガレイの煮付けやコガレイのから揚げなどを作り、直売所で販売してきた。

 転機となったのは東日本大震災と東京電力福島第1原発事故による出漁停止だった。「夫は浜に出たいという気持ちがあったが、どうにもならなかった。それを見ている私もつらかった」。渡辺さんも、地元の魚が手に入らないため、加工販売をやめざるを得なかった。

 2012(平成24)年6月に試験操業が始まり、20年12月には釣師浜漁港(同町)で約10年ぶりに競りが再開するなど、漁業は着実に復興に向けて歩みを進めた。だが、町内で唯一営業していた鮮魚店が閉店するなど、地元の魚を味わえる機会は少なくなるばかり。そんな中、渡辺さんは「おいしい魚をもう一度、自分の手でみんなに食べさせたい」との思いを募らせた。

 渡辺さんの会社設立を支援したのは、イベントの企画などで地域活性化に取り組んでいる日下智子さん(49)。渡辺さんの思いを聞いて起業を勧め、今は広報担当としてサポートする。

 第1弾の素材に選んだタコは、試験操業で初めて水揚げされるなど、渡辺さんにとって思い入れのある魚介類。電子レンジで温めるだけで気軽に食べられ、おかずにもなる親しみやすいシューマイとして売り出すことにした。

 町内では現在、使用できる加工施設がないため、松川浦漁港(相馬市)や釣師浜漁港に揚がったタコを宮城県名取市に運んで加工している。8個入り1150円。相馬市の浜の駅松川浦で冷凍した状態で販売している。今後は、浜福のオンラインショップでも取り扱う予定で、渡辺さんは「漁師になろうという若者たちも多い。地元の海産物の良さを伝えることで、そんな若い人たちの後押しになれば」と願う。