「楽しいはずの観光、事故悔しい」 知床観光船事故、涙の献花

 
遺体安置所に設けられた献花台に花を手向ける女性=26日午後、北海道斜里町

 重苦しい雰囲気の中、悲しみの対面が続いた。北海道・知床半島沖で観光船が遭難した事故の現場に近い斜里町では26日、事故の犠牲者を安置した遺体安置所に遺族とみられる人たちが次々と訪れた。「事故が起きて悔しくてならない」。これまでに居住地が本県となっていた乗客を含む11人の死亡が確認され、いまだ発見されていない行方不明者も多いことに、関係者や町民は沈痛な思いを募らせている。

 沿岸部だけでなく、市街地にも砂煙が舞うほどの強風が吹き荒れたこの日、町内の遺体安置所には日が落ちてからも到着する車があった。建物に入っていく人たちの表情はうかがえないが、足取りは重く映る。

 町によると、死亡が確認された11人のうち身元の確認が済んでいる人も多い。北雅裕副町長は「ご家族の希望をかなえて早く古里に帰してあげたい」と話した。居住地が本県となっていた乗客については、すでに遺体が引き渡されていることを明かした。

 この日は新たな行方不明者の発見には至らなかったが、遺体安置所には、引き揚げられた衣類、腕時計などが運ばれてきたという。

 建物の入り口脇には献花台が設けられ、地元の人が花などを手向けた。

 献花をした斜里町の女性(36)は「夫が漁師で小さい子どももいる。3歳の子が亡くなってしまい、かわいそう」と涙声で話し「一人でも多くの人が一刻も早く見つかってほしい」と願った。別の女性は「せっかく楽しみに観光に来てくれたのに事故が起きてしまい、悔しくてならない」と語った。

 潜水調査、阻む荒天

 船体発見への望みがさらに厳しさを増した。水中音波探知機(ソナー)は船体らしき反応も示したが、潜水調査は周辺の天候悪化で中断になった上、船体とは異なるとの見方も出ている。絵本やお菓子が詰まった小さなリュックサックが見つかったが、不明者の情報はない。27日も荒天が見込まれ、再開は未定。家族らは歯がゆさを募らせる。

 風や波が穏やかだった26日午前は捜索に向かった漁業関係者らが知床半島の先端付近に上陸。岩場で打ち上げられた複数の救命胴衣や救命浮環を見つけたが、付近の海中に人影はなかったという。

 だが、午後からは一転して強風に。参加した観光船業者の東海林竜哉さん(48)は27日の活動について「海が荒れる予定なので見合わせになるだろう」との見通しを示し「皆さんがおうちに帰りたいと思っているので少しでも早く見つけてあげられれば...」と話した。

 町や国土交通省による説明会は現地を訪れる家族が増えたのを受けて場所を変更し、斜里町内のホテルに会場を確保して開催。家族を乗せたとみられるバスは会場に入る際、窓のカーテンが全て閉められていた。

 運航会社「知床遊覧船」の社長は出席しておらず、説明不足の不満も。「きちんとした資料を出して分かりやすく説明を」との要望が出された。終了後、取材に応じた国交省の渡辺猛之副大臣は「会社にはしっかりと説明する材料を準備し、責任として、義務としてご家族に説明しなきゃいけないと強く言っていきたい」と強調した。(報道部・坂本龍之)