2度の地震被害、深刻な劣化 郡山「開成館」遠い公開

 
(右)今年3月の地震で崩落したしっくい外壁(左)崩落した館内のしっくい壁 (ともに郡山市提供)

 福島県郡山市の発展の礎となった安積開拓と安積疏水の歴史を伝える県指定重要文化財の「開成館」。本県沖を震源とする昨年2月の地震で建物が被災し、修繕に向けた調査を進めていた中で今年3月の地震により被害が拡大した。一般公開が休止中のため、市は市制施行100周年となる2024年に全面再開を目指しているが、度重なる被災で道筋が付いていないのが現状だ。今年で安積疏水通水140周年の節目を迎え、関係者からは早期復旧を願う切実な声が上がっている。

 「まさか2年連続で地震が起きるとは。目視で確認できる被害だけでなく、内部の状況がどうなっているか全容をつかめていない」。郡山市文化振興課の浜田暁子文化財保護係長(45)は被災した開成館を見つめると、落胆を隠せない様子で語った。

 市によると、昨年2月の地震で柱に亀裂が入り、天井の損壊や、しっくい壁の崩落などが生じた。市は業者に委託し、同12月から改修工事に向けた基礎調査に入った。開成館には構造の図面が残っていないため、調査の過程で新たに図面を作ったほか、耐震診断を実施した。その結果、屋根の耐用年数が超過し、下地の腐朽が激しいことが分かった。屋根裏の雨漏りや、はりのずれ、シロアリによる食害が確認されるなど当初より劣化状況の深刻さが明らかになった。

 市が調査の内容を精査していたさなか、追い打ちをかけるように今年3月の地震が襲い、しっくい壁の崩落場所が拡大するなど被害は悪化した。

 開成館では安積開拓や安積疏水に関する歴史資料を展示し、明治天皇の宿泊所が再現されている。市によると、新型コロナウイルス感染拡大前の年間来場者数は1万人ほどで、小中学生や高校生、大学生、観光客らが訪れる市内有数の施設だったが、昨年2月の地震以来、休館が続いている。

 浜田係長は「文化財なので、指定された時と同じ造りにしなくてはならず、ただ単純に建物を直すことができない」と復旧作業の難しさを挙げる。その上で「県や有識者と協議し、使用する材料や改修の方針を決めたい」と話した。

 安積疏水土地改良区の国分周司理事長(61)は「歴史のストーリーは今につながっている。興味のある人たちが自らの目で資料を確かめられる環境を取り戻せるよう一刻も早く直してほしい」と思いを口にした(緑川沙智)

 開成館 木造3階建ての擬洋風の建築物。1874(明治7)年、区会所(郡役所の前身)として建築され、安積開拓の中心を担う「県開拓掛」が置かれた。明治天皇の巡幸の際には宿泊所となった。県指定重要文化財や近代化産業遺産認定のほか、日本遺産「未来を拓(ひら)いた『一本の水路』」の構成文化財にも含まれる。