「空の守り手」支える2人の新戦力 福島県警ヘリ運航再開1年

 
県警ヘリ「ばんだい」を前に、訓練の合間に意見を交わす馬場さん(右)と白銀さん

 災害救助などで活躍する県警ヘリ「ばんだい」の運航再開から1年が過ぎた。この1年間の出動件数は162件で、災害時の救援や山岳遭難者の捜索、警備、事件対応など任務は多岐にわたる。運航を担う県警航空隊は安全対策の強化に向け、ベテランの操縦士と整備士を迎えた。新たに仲間入りした2人はこれまで培った知識や技術を後進に伝えながら、空から県内の安全を見守っていく決意だ。

 「ヘリを安全に飛ばすことに集中し、かつ任務を遂行する」。2020年12月に操縦士に採用された飛行係長の馬場正幸さん(56)は「ばんだい」の機体を見つめて熱っぽく語る。

 南会津町出身の馬場さんは陸上自衛隊でパイロットの経験を積み、20年7月に定年退官するまでの約30年間で総飛行時間は5000時間を超える。11年の東日本大震災時は仙台市の陸自霞目(かすみのめ)駐屯地からヘリで沿岸部に向かい、救助活動や物資の空輸、行方不明者の捜索などに当たった。

 県警を志したきっかけの一つは、郡山市で20年に起きた県警ヘリ「あづま」の不時着事故だ。「自衛隊の他部隊で発生した事故を見て、再開の大変さは分かっていた。自分が培ったノウハウを生かし、県警ヘリの運航再開に少しでも力になりたい」と動機を話す。

 常に現場への急行が求められる中、安全な飛行には整備士が重要な役割を果たす。今年4月に採用された整備士の白銀浩和さん(51)は「短時間で装備の付け替えや点検作業を行い、いち早く現場に向けて離陸した時にやりがいを感じる」と胸を張る。

 白銀さんは山形県の高校を卒業後、民間のヘリ会社や他県警の航空隊で整備士として20年以上勤めた。震災時、他県警の応援派遣で本県上空を飛ぶヘリに同乗し「被害の大きさに驚き、将来、福島の役に立ちたいと思った」と振り返る。21年に本県警が整備士を募集していることを知り、11年越しの思いをかなえた。

 ばんだいには馬場さんら3人の操縦士が搭乗する。馬場さんは「ヘリが飛ぶのは操縦士の力ではなく、整備士、地上でサポートするみんなの力」と感謝し「次の世代を担う人材育成も自分が担う役割の一つだ」と後進の指導にも力を注ぐ。

 近年は県内で地震や大雨などの自然災害が相次ぎ、広大な県土では山岳救助の出動も多い。「どんなに急いでいても確実な作業で安全にヘリを飛ばす」。白銀さんは航空隊の屋台骨を支えていく覚悟を口にした。

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 県警ヘリ 2機ある県警ヘリのうち、2020年に郡山市で起きた「あづま」の不時着事故後、安全確認のため「ばんだい」は約1年3カ月にわたり運航を自粛した。操縦士を新たに採用して操縦ライセンスを取得、シミュレーターによる訓練や複数人による運航ルートの安全点検などを徹底し、21年4月30日に再開した。現在は「ばんだい」1機のみが運航している。