特定少年の実名公表、社会で議論必要 塙の強盗殺人

 

 県内で初めて特定少年の実名公表となった塙町の強盗殺人事件。氏名公表や実名報道については専門家の間で賛否が分かれている。

 背景どこまで考慮 福島大・高橋有紀准教授(刑法)

 今回の事件では、実名公表にあたって生い立ちなど配慮すべき点を考慮しづらかったと受け止めている。しかし、どうして事件が起き、検察が実名を公表する際にどこまで背景が考慮されたのか社会で議論を重ねる必要がある。

 また、実名での報道は本来、刑事司法が適正に行われているか透明性を確保する観点で行われるものだ。一方、更生という観点から見れば、実名報道されること自体が烙印(らくいん)になってしまい、「悪いことを犯した人」という認識を強めてしまう懸念があるのは確かだ。

 読者や視聴者の中には、検察官送致(逆送)された段階で犯行が極めて悪質という印象を持ったかもしれない。実名が出たからといって更生の可能性がないと受け取らないようにしてほしい。

 検察の秘匿を危惧 専修大・沢康臣教授(ジャーナリズム論)

 検察庁は特定少年とした19歳を起訴した場合、原則きちんと実名を含めて公開するべきだ。改正少年法が施行して1カ月が経過したが、検察庁が(特定少年の起訴を巡って実名を)非公表にしているケースが相次いでいるように見える。検察官が(実名を)秘匿する権限があるのか疑問を持っており、危惧している。刑事手続きを公開しなければ、市民の目が届かなくなってしまう。

 報道機関は秘密処罰を防ぐため、市民に検証材料を提供することが重要な役割だ。ただ、それは制裁目的ではないことを心する必要がある。例外があることは否定しないが悪いやつだから書く、悪くないから書かないではない。刑罰がかかる裁判になる以上、誰がどう裁かれようとしているのか隠すべきではない。

 更生へ実害大きい 少年事件に携わる倉持恵弁護士

 特定少年の実名公表や実名での報道は控えるべきだ。実名公表で更生の可能性が低くなってしまう。東京などの大都市とは異なり、本県など地方は匿名報道でも特定される可能性がある。それが実名ならばなおさらだ。社会に戻って仕事を探す時、実名公表の影響で本人が職に就けないなど悪循環にもつながる。だからこそ、実名を公表すべきではない。もちろん事件に関する報道は必要で、再発防止や、必要な法改正に向けた提言など報道機関が担える役割は多い。ただ、そのために実名が本当に必要かは疑問だ。

 更生の観点から見ても、実益より実害の方が大きいのではないか。実名か匿名かよりも、犯した罪に向き合わせ、きちんとした生活環境を整えていくことが大事ではないか。

 県内5放送局で実名報道 顔写真公表3局、ネットは匿名も

 福島地検が氏名を公表したことを受け、県内の民放テレビ4局とNHKは、いずれも夕方のニュースで被告を実名で報道した。

 福島中央テレビ、福島テレビ、テレビユー福島の3局はニュース番組で氏名と顔写真を放送し、実名報道の理由に「事件の重大性や法改正の趣旨」などを挙げた。

 一方、福島放送はニュース番組で氏名のみを報道し、インターネット上の記事は「ネットの特性である『拡散スピード』や『デジタルタトゥー』などを考慮した」として、匿名で報道した。

 NHKは氏名のみを放送し「重大性や悪質性、地域社会に与えた影響などを総合的に検討した」と理由を説明した。