「ウエルカム」訪日客 福島県内観光地、受け入れ準備

 
客足が戻りつつある大内宿。外国人観光客の受け入れ再開に対して関係者は期待と不安を抱えている

 岸田文雄首相の訪日外国人観光客受け入れ表明から一夜明けた27日、県内の観光地には「コロナ禍前のにぎわいを再び」と期待の声が広がった。中には外国語表記の案内板の設置を検討しているところもある。一方で新型コロナウイルス感染は収束したわけではなく、当面は添乗員同行のパッケージツアーに限定されることから、期待と不安が入り交じる。

 「インバウンド(訪日外国人旅行客)はもちろん歓迎する。日本人の観光客と合わせて、大内宿がさらににぎわえば」。下郷町の大内宿の大内区長の佐藤一夫さん(57)はそう期待する。大内宿観光協会によると、コロナ禍前の2019年12月の大内宿の外国人入り込み数(専用駐車場)は普通車約300台、観光バス120台を超えていたが、感染拡大以降の20年12月は普通車と観光バスで計約50台までに落ち込んだ。それだけに、にぎわいを取り戻したい思いが佐藤さんにはある。

 ただ、4~5月の大型連休後の観光客の来場は低調という。「続く感染対策や物価上昇などの経済不安でいまひとつ盛り上がっていない。まず国内経済の回復が先決ではないか」と話す。

 大内宿で飲食店などを経営する只浦豊次さん(67)は「分散」による観光客の受け入れを進める考えだ。利用する時間帯を分散することで感染対策と外国人観光客受け入れの両立を提案し、「受け入れ態勢の整備と海外に向けた新たな情報発信が急務」と語った。

 三島、金山両町を流れる只見川で運航している観光用の渡し船「霧幻峡(むげんきょう)の渡し」は、JR只見線沿線の人気スポットの一つ。金山町の奥会津郷土写真家、星賢孝さん(73)が撮影した絶景をSNS(交流サイト)で紹介するなど、沿線で活動する人たちは積極的な情報発信に努める。

 金山町観光物産協会によると、19年に乗船や撮影で訪れた観光客約4000人のうち、台湾人を中心とした外国人が1割を占めたという。同協会事務局長の小沼優さん(31)は「コロナ禍前のようにたくさん来ていただいて、日本の原風景を楽しんでもらえるとうれしい」と話す。10月1日の只見線全線再開通や紅葉を目当ての観光客が増えることにも期待が高まる。

 コロナ禍の昨年7月にオープンした白河だるま総本舗(白河市)の観光施設「だるまランド」にとって、外国人観光客の誘致、受け入れは初めての試み。同本舗14代目の渡辺高章さん(29)は「海外の人に来てもらい、だるま文化に触れてほしい」と期待する。

 同施設の案内板などは全て日本語のため、英語や中国語の案内板の設置を検討している。さらに「だるま文化を英語で説明できるように準備していく」という。

 感染再拡大の不安はあるが、「だるまは中華圏からの人気が高く、お土産として定着している。だるまの良さを発信していきたい」と渡辺さんは力を込める。

 福島県、ツアー向け情報発信へ

 観光庁の宿泊旅行統計調査によると、県内の訪日外国人延べ宿泊者は2011年に前年比約6万3000人減の2万3990人まで減少。その後、17年には10年を上回る9万6290人、19年には17万8810人まで拡大した。県によると特に個人客を中心に実績を重ねてきた傾向があるという。

 本県にとってツアー客への限定はコロナ禍前とターゲット層が異なるため、県の担当者は「何を準備すべきか早期の情報共有を求めたい」とする。

 県はこれまで海外現地窓口での情報発信を進めてきた。台湾やタイに加えて昨年度は米国、英国、フランス、スペイン、オーストラリアに現地窓口を設置。「アフターコロナ」に旅行先として本県を選択してもらえるようにしてきた。今後も現地目線での情報発信を続ける構えで「コロナ前の水準に戻せるよう努力する」(観光交流課)と強調した。