東電強制起訴控訴審、6日結審 津波予見性争点に弁論へ

 

 東京電力福島第1原発事故を巡り、業務上過失致死傷罪で強制起訴され、一審東京地裁で無罪となった勝俣恒久元会長(82)ら東京電力旧経営陣3人の控訴審第3回公判は6日、東京高裁で開かれる。前回、指定弁護士(検察官役)が請求した専門家の証人尋問や第1原発の現場検証などが不採用とされた中、指定弁護士と弁護側の双方が弁論などを行い、結審する見通し。

 被告は勝俣会長のほか、武黒一郎元副社長(76)、武藤栄元副社長(71)。3人は、第1原発に津波が押し寄せることを予見できたのに対策を怠った結果、東日本大震災による津波で事故を招き、長時間の避難を余儀なくされた双葉病院(大熊町)の入院患者ら44人を死亡させたなどとして2016年2月、強制起訴された。

 公判では、巨大津波の襲来を具体的に予見できたかなどが最大の争点。一審東京地裁は19年9月、判決で国の地震予測「長期評価」の信頼性を否定し、「巨大津波の襲来を予見できなかった」などとして、3人にいずれも禁錮5年の求刑に対し、無罪を言い渡した。

 控訴審で指定弁護士は、一審判決の最大の誤りは「長期評価の信頼性を否定したこと」と指摘。3人が事故前に長期評価などに基づき10メートル超の津波が押し寄せる可能性があると認識しながら、「防潮堤の建設や水密化など具体的対策を講じなかった」とした。一方、弁護側は、長期評価は専門家の間でも手法や見解を疑問視する声があったとした上で、「(津波)対策は長期間となり、事故前に着手しても間に合わなかった」と反論している。6日の弁論でも双方がこれまで同様の主張を繰り広げるとみられる。

 原発事故後に避難者らが国や東電に損害賠償などを求めた民事訴訟は全国で約30件で原告数は1万人を超える。これまでの判決では、国の責任について判断が分かれた一方、いずれも東電に対し賠償を命じた。長期評価の信頼性を認める判決も出ている。

 民事訴訟では当事者間で「どちらの責任が重いか」などを判断する一方、刑事事件では推定無罪の原則から「合理的な疑いを挟む余地」がないほどの有罪の立証が必要とされる。

 こうした中、現場検証などが不採用となったことに、遺族らを支援する福島原発告訴団弁護団は、民事で行われた原発内の現地進行協議で明らかになった津波対策などもあったとして「見ようとしなかった証拠関係に何が語られているかを知るべきだ」などと指摘、東京高裁に一審判決の見直しを求める意見書を提出している。

 原発事故の刑事責任の有無について、司法が改めてどう判断するのか注目が集まっている。