「津波予見性」巡り再び対立 東電旧経営陣強制起訴結審

 

 6日に結審した東京電力旧経営陣3人の強制起訴控訴審。検察官役の指定弁護士が申請した東京電力福島第1原発の現場検証などは不採用となる中、控訴審で採用された証拠などについて弁論が行われ、双方が一審と変わらず、国の地震予測「長期評価」の信頼性などについて真っ向から意見を対立させた。

 「被告人らにできもしない(津波の)予見をせよと言っているのではない」。指定弁護人が語気を強めると法廷内は一気に張り詰めた空気に包まれた。指定弁護士側は一審判決で否定された長期評価の信頼性を裏付けるため、一審判決後に出された長期評価の信頼性を認めた民事訴訟の判決文を証拠に示した。その上で、改めて長期評価に基づく試算結果を認識していた勝俣恒久元会長(82)ら3人は大津波を予見できたと主張。「長期評価が認められることを前提とすれば、被告人らの過失責任を否定することは正義に反する」と言い切った。

 「控訴審の取り調べを受けても原判決に誤りがないことは明らかだ」。一方、弁護側は泰然とした様子で長期評価の信頼性を改めて否定、控訴棄却を求めた。民事訴訟の判決で事実認定を当否する議論はできないとして「事実認定の手法も立証の程度も相違がある」と指摘。指定弁護士側の証拠を次々と否定した。

 この日、法廷に勝俣元会長と武藤栄元副社長(71)の姿はなく、武黒一郎元副社長(76)のみが審理を見届けた。双方の主張が展開する中、正面を見つめたまま身じろぎもせず聞いていた。被害者遺族2人の「現場を見てもらえずに結審を迎えることは悔しい」などとする陳述書を指定弁護士が代読した際も表情を崩さなかった。

 開廷から1時間を過ぎた午後3時。細田啓介裁判長が閉廷を宣言して傍聴人に退出を求める中、審理の終結に納得のいかない傍聴人がその場にとどまり「被害者の声を聞け」と法廷内に怒号が響いた。武黒元副社長が傍聴席に目を向けることは一度もなかった。

 告訴団「審理尽くされたと思えぬ」

 閉廷後に記者会見した福島原発告訴団の武藤類子団長は「現場検証や証人尋問が認められず、審理が尽くされたとは思えない。今後、新たな局面が出てくることを期待したい」と強調した。

 17日に最高裁は原発避難者らが起こした訴訟の判決で国の責任について判断を示す。同席した被害者参加代理人の海渡雄一弁護士は「最高裁判決や7月の東電株主代表訴訟で強制起訴の一審判決と違う判決が出れば、弁論再開という可能性は残る」と話した。

一審東京地裁の判決と双方の主張