頭よぎった寸劇...被害免れる 84歳宅に男訪問、なりすまし詐欺疑う

 
県内で相次ぐ「なりすまし詐欺」の被害。犯人が高齢者宅を訪問し、巧みに現金やキャッシュカードをだまし取る手口が横行している(写真はイメージ)

 県内で「なりすまし詐欺」の被害や予兆電話が後を絶たない。「おかしいなと思ったけれど、やはり詐欺だったか」―。県北地方の女性(84)は、自宅まで訪ねてきた男にキャッシュカードを渡す寸前で思いとどまり、被害を免れた。女性の体験談から詐欺集団の巧妙な手口の端緒が見えてくる。

 「○○支所です。通知は届いていますか」。行政職員を名乗る男から女性方に電話があったのは正午前。昼食の準備をしていた女性は、自宅に送られた何かの郵便物のことだと思い「届いていますよ」と答えた。

 「キャッシュカードが古くなっていますよ」と男は話を続けた。女性は1週間ほど前、孫に付き添ってもらい、現金を引き出したばかり。「おかしい」と思ったが、男は「早く取り換えないと駄目だから、すぐ行きます」と電話を切った。

 覚えていた警察官の言葉

 女性の頭をよぎったのは、警察がなりすまし詐欺の手口を紹介した寸劇だった。女性は2、3年前、地元の老人クラブの集まりで寸劇を見ており、犯人役の語り口や警察官が繰り返してい「電話でキャッシュカードという言葉が出たら、詐欺だと思ってください」との強い言葉がふいに思い浮かんだ。ただ、まだ半信半疑で、警察や外出中の家族に連絡しなかった。

 昼食を済ませて洗い物をしていると玄関の呼び鈴が鳴った。玄関口にはスーツ姿の男が立っていた。「電話が来ましたよね? キャッシュカードを見せてください」。大柄の男は、なまりのない口調で要求した。

 女性はキャッシュカードから手を離さず、男に見せた。「ここがちょっとおかしいね」。男はカードを見ながら話し始めた。疑う女性は「自分で窓口に返しにいく」と勇気を振り絞って拒んだが、男は「窓口では交換できない」と言い返し、封筒を取り出してカードを入れるよう迫った。やり取りが長引くと、男は電話をかけに外へ出た。その後、玄関に置かれた封筒を手に取って立ち去ったという。

 帰宅した家族にいきさつを話し、警察に相談するとなりすまし詐欺だと伝えられた。女性は「男がすぐに家に来たので、驚いてしまった。また誰か来るのではないかと思うと怖い」と不安な胸の内を明かす。捜査関係者は「犯人は少しでも捕まりそうだと感じれば次の高齢者を狙う。おかしいと思ったら、直ちに警察に相談してほしい」と訴える。

 昨年より多い48件、被害1億円突破

 県警が10日発表した1~5月の「なりすまし詐欺」の県内被害件数は前年同期と比べて6件多い48件で、被害額は約4千万円増の1億335万円と1億円を突破した。被害者の大半が65歳以上とされる。5月下旬には福島市の80代女性が自宅を訪れた男に現金500万円を渡し、だまし取られる事件があった。

 詐欺グループが住民に接触するための最初の手段は、ほとんどが一本の電話からだという。県警は「電話で還付金やキャッシュカードなどお金に関わる言葉が出たら、まず詐欺を疑ってほしい」(生活安全企画課)と注意を呼びかけている。