被災の教訓、イラストに ico.さん「もしも」に動けるよう発信

 
ico.さんが作成した「もしもすごろく」の一部。災害時の体験や教訓をコミカルなイラストでまとめている

 「腰抜かしてる場合じゃない」。福島市で5月に開かれた、防災をテーマにしたイラスト展の名称だ。企画したのは、同市在住のイラストレーターico.(いこ、本名・物江麻衣子)さん(36)。東日本大震災と東日本台風(台風19号)で被災した自身の経験と、そこから得た教訓をコミカルなイラストで発信している。

 宮城県名取市閖上(ゆりあげ)地区の出身。東日本大震災時も閖上に暮らしていた。家族ともに無事だったが、実家は津波で流され、避難生活を経験した。2017(平成29)年、結婚を機に福島市に移住。そこでも再び災害に見舞われた。本県を襲った19年10月の東日本台風で、自宅マンション近くの河川が氾濫。1階の自宅に流れ込んだ濁流は壁や床板を突き破り、家財全てが泥水にまみれた。5階に避難して一夜を明かし、翌朝、救助ボートで救出された。その後、約2カ月間、夫の職場の空き部屋で避難生活を送った。

 普段はフリーのイラストレーターとして百貨店や化粧品メーカーの広告などのイラストを手がける。郡山市の将来像を描いたグランドデザインも担当した。

 2度の被災体験から、防災をテーマにしたイラスト展を開きたいと漠然と考えていた。今年3月、最大震度6強を観測した地震が起きた。揺れに襲われた自宅には1歳の娘がいた。「腰が抜けそうなほど怖かったが、守りたい人がいるからこそ、いざというときに動けるようにならないといけないと痛感した。私の経験や知識を共有することで、災害時に大切な人や自分を守るため冷静に一歩を踏み出せる力になれば」。イラスト展の開催を決意し、以前仕事で被災者の体験談を4こま漫画にしたこともあり自身の体験も4こま漫画やイラストで描き始めた。

 展示会に向け、被災時の行動を考えることでいざというときに役立ててほしいと作成したのが「被災シミュレーション もしもすごろく」だ。外出先で地震が発生し、避難所に到着するまでの過程で想定されるさまざまな危険やアドバイスを、29こまのイラストにした。例えば「停電でロック式駐車場に止めた車を出せない」「空腹で子どもが号泣!防災ポーチに入れておいたアメをあげる」。実体験や子育ての目線も反映させた。

 9月には名取市でもイラスト展を開くほか、防災カレンダーを製作し、12月に福島市のギャラリーカフェで展示することも予定。SNSを活用した情報発信も検討している。ico.さんは「被災をわがこととして日常生活に重ねて考えることが防災につながる。いざというときのため、家族や大切な人と共有してほしい」と話している。

 「もしもすごろく」は公開していないが、要望があれば提供する。問い合わせはico.公式サイト(http://icollection.me/)から。(今泉桃佳)

 防災ポーチ「これは入れよう」

 イラスト展「腰抜かしてる場合じゃない」の開催に合わせ、被災をわがこととして考えてもらおうと、ico.さんを交えた女性限定の防災ワークショップも福島市で開かれた。初回は必要最低限の防災グッズを入れる「防災ポーチ」の中身を考案した。防寒対策や敷物に使えるアルミシート、防災笛、懐中電灯、モバイルバッテリー、ウエットシート、ばんそうこうなどが必要との声が上がった。2回目は震災を想定し、その際の行動をシミュレーション。参加者が「もしもすごろく」をヒントに、起こり得るトラブルとその対応を日常生活に重ねて考えた。

防災ポーチの中身ico.さんが考えた「防災ポーチ」の中身