「一日も早い」帰還を考慮、大熊の復興拠点 避難指示30日解除

 
大熊町の復興拠点について、30日に避難指示を解除すると発表した吉田町長(中央)=16日午後、大熊町役場

 「解除の見通しはたったが、課題はたくさんある」。16日、大熊町で開かれた政府、県との特定復興再生拠点区域(復興拠点)の避難指示解除を巡る会合の後、吉田淳町長は新たなまちづくりに目を転じていた。東京電力福島第1原発事故前の町の中心地であるJR大野駅周辺の避難指示解除は30日となったが、その決断はどのようにして行われたのか。

 避難指示解除についての住民説明会は4、5の両日、4会場で開かれた。町民からは「生活インフラは十分に回復していない」という指摘から、「家の再建を考えているが、ハウスメーカーは避難指示が解除されないと契約できないと言っている」という訴えまで、幅広い声が寄せられた。吉田町長は「帰ってからの不安が6割、放射線への心配が4割。帰ることを前提とした心配」と受け止めた。

 吉田町長は町議会に全員協議会の開催を求め、町民の意見を報告した上で、10日に国や県との協議についての一任を取り付けた。その後、町と石井正弘原子力災害現地対策本部長、鈴木正晃副知事との協議の場が16日に設定され、「6月末~7月上旬」としてきた解除日の絞り込みに入った。

 吉田町長は「引っ越し業者や宅配業者に入ってもらうためには2週間ほどの周知期間が必要」と考え、16日から計算して2週間後の30日を避難指示解除日とすることを決めた。実務面のスケジュール感、そして「一日も早く」という観点から解除日を提示した。

 ただ、現在の町の中心は先行解除された南西部の大川原地区。これから解除されるJR大野駅周辺と融合したまちづくりをどう進めるか。吉田町長は「無料のバスや通信回線の充実などで距離を縮めたい。実績を重ねるのを見てもらうことが、帰還意向率アップにつながる」と語った。その視点は、いまだに方針が固まっていない復興拠点外の地域にも向けられている。

 石井本部長は「一人でも多くの方が早く古里に戻れるよう、引き続き全力で取り組む」と述べ、鈴木副知事は「他の町村にとっても住民帰還に向けた呼び水になる」と評価した。避難指示解除はゴールではなくてスタート―。課題は山積している。