【原発訴訟・最高裁判決の余波】怒号、涙...見放された「心の救済」

 

 東京電力福島第1原発事故の避難者らが国と東電に損害賠償を求めた集団訴訟で、国の責任を否定した17日の最高裁判決。「国民の命を守る責任の所在はどこにあるんだ」。裁判を見守ってきた原告は、東電を規制する立場だったはずの国に対して法的な責任が認められず、深く落胆した。

 午後2時30分、厳かな雰囲気に包まれ開かれた最高裁第2小法廷。「被上告人らの控訴を棄却する」。菅野博之裁判長が淡々と判決を告げると、原告や傍聴人は体を動かさず黙ったまま視線だけを4人の裁判官に向けた。

 菅野裁判長は、息をつく間もなく4件の訴訟を統一した判決理由を読み上げた。「津波を防ぐことはできなかった」「国に責任があるとは言えない」。国の責任を否定する決定的な言葉が出ると、傍聴人はうつむき目を閉じた。国側の代理人は、肩の力が抜けた様子でいすの背にもたれかかった。最長約10年間に及んだ訴訟の判決の読み上げは、わずか15分で幕を閉じた。法廷内で、声を上げる傍聴人は一人もいなかった。

 閉廷後、最高裁前で福島訴訟事務局長の馬奈木厳太郎(まなぎいずたろう)弁護士が「最高裁は国の責任を認めない」と報告すると、各地から集まった原告や支援者に怒りや悲しみが広がった。「こんな判決、絶対に福島が許すはずがない」。怒号が飛び、涙を流す原告の姿もあった。

 「私たちの努力が一瞬にして奪われた」。愛媛訴訟で父の寛志さん(43)や妹とともに、国の責任を求め続けてきた高校3年の阿部明歩さん(17)は最高裁が示した判断に失望感をあらわにした。

 6歳の時に南相馬市小高区で被災し、両親と妹の家族4人で愛媛県に避難した。長引く避難生活で、家族が分断してしまい「心が不安定」な日々を送った。

 その中で「少しでも愛媛に避難した人たちの力になりたい」と、家族3人で訴訟に加わった。上告審弁論で意見陳述を行い、自分の思いを代弁してくれた父の姿に心が救われた。しかし、高裁判決で認められた国の責任は一転して否定された。阿部さんは「何のために自分の気持ちを押し殺してまで耐えて、頑張ってきたのか」と嘆いた。

 傍聴した福島(生業(なりわい))訴訟原告の一人、須賀川市の横田秀雄さん(70)は「ショックだ」と判決に困惑の表情を浮かべた。「本当に国は反省しているのか。今後の原発規制の在り方も不安だ」と疑問を投げかけた。