「安倍さんだから復興できた」 銃撃事件、福島県民から惜しむ声

 
5日に小野町を訪れた安倍元首相と撮影した写真を見返す西本さん

 8日午前11時半ごろ、奈良市の近鉄大和西大寺駅前で参院選の街頭演説をしていた自民党の安倍晋三元首相(67)が背後から銃撃された。安倍氏は搬送先の病院で午後5時3分に死亡した。首2カ所や心臓などに損傷があり、失血死とみられる。奈良県警は元海上自衛隊員の無職山上徹也容疑者(41)=奈良市大宮町3丁目=を殺人未遂容疑で現行犯逮捕。容疑を殺人に切り替えて10日に送検する方針。

 安倍元首相は、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故後、足しげく本県を訪れ、日本のトップとして力強く復興を推進してきた。突然の事件は、交流を重ねてきた県民にも大きな衝撃を与えた。

 「必ず元気な顔を見せてくれると信じていた。非常に残念」。安倍元首相と交流の深い広野町のNPO法人ハッピーロードネットの西本由美子理事長(69)は表情を曇らせた。

 昭恵夫人と2012(平成24)年1月に月刊雑誌で対談したことをきっかけに、安倍元首相との交流が始まり、自宅での食事会にも何度か招待を受けた。首相として本県復興に携わる姿に「地元住民の声に正面から向き合い、少しずつ復興を前に進めてくれた。安倍さんが総理だったからここまで復興できたと思う」と振り返る。今月5日にも小野町で会い、5分ほど世間話をしたばかり。「心優しく、気持ちが強い人だった」

 手を握り「頑張って」

 15年5月に開かれた「太平洋・島サミット」で安倍元首相が震災で被害を受けたいわき市沿岸部の薄磯地区に各国首脳らと訪れた際、同区長鈴木幸長さん(69)は住民代表として参加した。安倍元首相に感謝を伝えると、握手を求められ「頑張ってください。応援してますから」と声をかけられたという。鈴木さんは「当時はまだ海水浴場も再開できず、がれきも残っていた。復興への背中を押してくれた」と振り返る。事件については「武力で解決することは許されることではない。一番卑劣なやり方だ」と厳しく糾弾。「今後も安倍さんだからできることがあったはず。残念でならない」と悼んだ。

 県産食品の安全発信

 安倍元首相は本県を訪れた際、原発事故の風評が根強い農産物や水産物を度々口にし、本県食品の安全性を発信してきた。16年6月にいわき市の小名浜魚市場を視察した際には、試験操業で水揚げされた魚などを試食した。県漁連の野崎哲会長(67)は、安倍元首相が本県を視察する際に、水産業の現状などを伝えてきた。「今回の事件は許し難いことだ。本県復興に尽力し、水産物の風評払拭に向けても取り組んでくれた」と話し、「安倍元首相が尽力してくれた思いを継いで、本県水産業を復興させていきたい」と語った。

 暴力「間違っている」

 参院選の真っただ中に元首相が銃撃されるという凶悪な事件に、県民からは憤りや驚きの声が上がった。

 「事件は前代未聞だ。犯行の理由や意図は分からないが、仮にどんな政治的な意見を持っていても殺すことは間違っている」。いわき市の自営業佐藤邦夫さん(69)はそう憤る。会津若松市の自営業満山美智子さん(53)は「まさか、日本で銃撃事件が起きるとは思わなかった。近くでも起きないとは限らず、人ごとではない」と声を震わせた。

 郡山市のJR郡山駅で買い物中だった白河市の主婦伊勢野恵美さん(30)は「発生は駅周辺だったと聞いたが、身近な場所で事件が起きていたらと思うと怖い」。ネットニュースで事件を知ったという桑折町の高校生渡辺弘晃さん(17)は「率直に怖い。(安倍元首相は)優しい人という印象で、どうしてこんなことになったのか」と驚きを隠さなかった。