東電旧経営陣に賠償命令 株主代表訴訟、原告団「全面的に勝った」

 
判決後、「株主勝利」などと書かれた紙を掲げる原告ら=13日、東京地裁

 東京電力福島第1原発事故を巡り、東電旧経営陣5人が津波対策を怠り会社に損害を与えたとして、総額22兆円を東電へ賠償するよう株主が求めた訴訟の判決で、東京地裁は13日、うち4人に計13兆3210億円の支払いを命じた。旧経営陣個人の責任を認める司法判断は初。賠償額は国内の民事訴訟で最高とみられるが、実際に支払うのは困難と見込まれる。

 朝倉佳秀裁判長は「重大事故が生じないよう最低限の津波対策を速やかに指示すべきだったが、取締役としての注意義務を怠った」と判断した。事故前の対応は「安全意識や責任感が根本的に欠如していた」と述べた。5人は勝俣恒久元会長(82)、清水正孝元社長(78)、武黒一郎元副社長(76)、武藤栄元副社長(72)、小森明生元常務(69)。小森氏を除く4人が賠償を命じられた。

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 東京電力福島第1原発事故を巡る株主代表訴訟で、旧経営陣の賠償責任を認める判決が13日に言い渡され、東京地裁前に詰めかけた原告らからは「よし、やった」と歓声が上がった。

 「10年間かかりましたが、ついに(東電の旧経営陣)個人の責任を認めさせることができました」。判決後、地裁前で代理人弁護士が勝訴を報告。「株主勝利」などと書かれた紙を示すと拍手が湧き起こった。

 法廷内で判決内容を聞いた原告の一人、浅田正文さん(81)は「体に電流が走るくらいうれしい」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。

 浅田さんは原発事故まで、自然豊かな環境に魅力を感じ、都内から移住した田村市都路町に住んでいた。だが原発事故で生活は一変し、金沢市に避難した。原告に加わったのは「脱原発を進め、次世代に自然豊かな都路を継承したい」との思いからだった。

 法廷で意見陳述もした浅田さんは「今回の判決を受けて、エネルギー問題について考えるきっかけになってほしい」と話した。

 判決後、記者会見した原告代理人の海渡雄一弁護士は「全面的に勝った満点の判決」と評価し、「事故で苦しんだ多くの住民に心から喜んでもらえるのではないか」と語った。

 同じく原告代理人の河合弘之弁護士は「担当役員任せではだめだと、他の電力会社への警告になる」と強調した。原発事故を巡る民事訴訟を巡っては先月、最高裁で国の賠償責任を認めない判決が言い渡されたばかり。河合弁護士は「今回の判決は、最高裁判決を根底から覆すものだ」とし、「一審判決が無罪だった強制起訴の控訴審にも大きな影響を与える」と話した。

 控訴断念求め声明

 株主代表訴訟弁護団は13日、旧経営陣5人に対し控訴しないよう求める声明文を発表した。

 「今後の訴訟に良い影響」 福島生業訴訟原告団長

 原発事故の責任を巡り、国や東電と民事訴訟で争ってきた福島(生業(なりわい))訴訟原告団で団長を務める中島孝さん(66)は「目先の利益を優先し、安全対策を取らなかった旧経営陣に責任があるのは当然だ」と語気を強めた。その上で「今回の判決は、今後の集団訴訟にも良い影響を与えるはず」と期待した。

 ただ、中島さんは賠償額について「被災者の訴訟より株主訴訟の方が賠償額が大きいのは違和感がある」と話した。