157キロ「危険運転では」 いわき死傷事故判決、納得できぬ遺族

 

 時速150キロ超で車を運転するのは「危険」ではないのか―。地裁いわき支部で15日に判決が言い渡された死傷事故を巡り、事故で息子を亡くした遺族が、今もやりきれない思いを抱えている。起訴された罪名は自動車運転処罰法違反(過失運転致死傷)罪だったが、事故の状況から「危険運転致死傷ではないのか」という思いがあるからだ。専門家は法の不備を指摘し「さらなる見直しが必要」と話す。

 「法律上、危険運転が適用できないのは理解したが、納得はしていない」。事故で息子を亡くした遺族は胸の内を明かす。

 判決などによると、事故は昨年7月24日午後10時10分ごろ、いわき市小名浜上神白字館下の県道で発生。時速157キロで走行していた乗用車が脇見などをした過失で道路中央の橋の欄干などに衝突し、同市の会社員男性=当時(18)=が死亡、4人が重軽傷を負った。同支部は乗用車を運転していた男(19)に対し、懲役3年、執行猶予5年(求刑懲役4年以上6年以下)を言い渡した。

 県警は男を「危険運転致死傷」の疑いで逮捕したが、起訴罪名は「過失運転致死傷」だった。遺族によると、検察官から「(運転手の)脇見が原因で事故が起きた」と説明を受けたという。

 「ふざけるなと思った。脇見をしたという証言をしたのは被告人だけで、被告人の言い分を優先するのか」と男性の父親(43)は憤る。母親(42)も「150キロ以上の速度を出していたことは『危険』ではないのか。何のための法定速度なのか」と話す。「あれだけの事故を起こしても、過失運転致死傷しか適用されないとなれば、またスピードを出す人が出てきてしまう」。母親は懸念を示す。

 中間的な量刑を

 交通犯罪などに詳しい東京都立大の星周一郎教授(刑法)によると、事故原因が法で定める事情(進行の制御困難な高速度での運転など)と「故意」の立証ができない限り、危険運転を適用することは難しいという。

 今回のように、事故原因が「脇見」と判断されれば過失運転になる。

 星教授は「一般感覚と法解釈の間に隔たりがある。万人が100%納得することは難しいが、隔たりを放置しておくと、いずれ刑事司法に対する不信につながりかねない」と危惧する。また危険運転致死傷の創設から20年以上がたち「想定していなかった事態が多々生じている。今後も同様のケースが起きないとは言えない」という。「危険運転に該当しないから、消去法的に過失運転にせざるを得ない現行法の構造だと、ギャップが大きすぎる」とした上で「無謀な運転をした結果の死傷事故については、危険運転と過失運転の中間的な量刑を定めることも必要。それによって、納得のいかなさにも対応できるようになるのではないか」と話す。

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 危険運転致死傷罪 1999年に東京都世田谷区の東名道で飲酒運転の大型トラックが乗用車に衝突して女児2人が死亡した事故を契機に、2001年に創設された。進行の制御が困難な高速道での運転やアルコール・薬物の影響で正常な運転が困難な状態で事故を起こした場合などに適用される。被害者や遺族の厳罰化を求める声などを受けて法定刑の引き上げや適用範囲が拡大された。