今春高卒者、高まる県内就職志向...福島県が地元定着後押し

 
福島市で6月に開かれた新入社員研修交流会。入社1~3年目の若手社員が悩みなどを共有して交流を深めた

 県内の高校を今春卒業して就職した人のうち、県内企業の内定を表す県内留保率は82.7%と、記録が残る過去15年で最も高くなった。新型コロナウイルス感染症の長期化で「地元志向が強まっている」とみる県は、若手人材を県内にとどめるために早期離職の防止に関する取り組みに注力する。専門家も、行政を中心とした異業種間での合同研修会の開催など、同年代の交流を通した人材育成の必要性を指摘する。

 話す仲間が少ない

 「(職場に)若い人が少ないんだよね」「上司との接し方が分からなくて...」。6月下旬、福島市で開かれた新入社員研修交流会での一場面。交流会には県北地域の中小企業25社から、入社1~3年目の若手社員約60人が参加した。職場での悩みや不安、心配事を打ち明ける時間が設けられ、参加者同士、率直な思いを口々に語り合った。

 抱える悩みは、人間関係や職場環境、将来への不安が大半だった。製造関係の会社に勤めて2年目の女性(19)は、同期入社の社員がおらず「同世代の人も同じような悩みを持っていることが分かって少し安心した」。日常の何げない悩みを共有できる機会が貴重だったようだ。印刷業で、入社3年目の男性(20)は「知らない業種の業務内容などを聞けて有意義だった」とする。

 県外への流出懸念

 県によると、今年3月の県内留保率は、過去最高の82.7%に達した。「若い世代が県内に残るのは良い傾向」(雇用労政課)と評価する一方、懸念は人材の県外流出につながる可能性がある若手の早期退職だ。福島労働局が公表した新規高卒就職者の離職状況は【表】の通り。3年以内離職率は35~40%程度、1年以内離職率は10%台中盤で推移し、おおむね全国平均より低い。ただ、企業規模が小さいほど離職率が高くなる傾向にあるという。

 県や労働局、経済団体などで組織する県新規高卒者就職促進対策本部は、早期離職の原因として▽職場の人間関係▽職場環境▽仕事内容のミスマッチ―などを挙げる。特に小規模事業所では、年齢が近い同僚が少なく、悩みを打ち明ける環境が身近にないことが早期離職につながるとみている。このため県は、異業種間での若手社員の交流会の開催や、新入社員向けの個別相談窓口の新設などてこ入れをしている。

 横のつながり重要

 仙台市のキャリアコンサルタント森祐一氏(44)は、地方中小企業の若手職員の離職防止対策として「共感できる環境の創出」を挙げる。年代が近い人同士が同じ気持ちを共有することで「(自分だけではないと分かり)気が楽になるケースがある」とする。

 また都市部の大企業などと比べ、中小企業では経営基盤などから人材育成に経費をかけにくいとも分析、行政主導での対策を重要視する。県の交流会に参加した中小企業が一部にとどまることから「(コロナ禍ではあるが、もっと多くの企業が参加できるよう)周知する必要がある」とも指摘した。県は「採用人員が限られる中小企業で、企業の枠を超えた『横のつながり』をつくっていく」(雇用労政課)としている。(報道部・折笠善昭)