福島県内公立中、「部活地域移行」不透明 人材確保や運用に課題

 
部活動指導員を務め、顧問のサポートや指導をしている矢吹さん(手前)

 スポーツ庁が公立中学校の運動部活動について、2025年度末を目標に休日の指導を地域のスポーツクラブや民間のジムなどに委ねる「地域移行」を目指す方針を打ち出した。県内の教員や保護者は「教員の負担軽減につながる」「より専門的な指導を受けられるのでは」と歓迎する。しかし、費用負担や運用方法について不透明な部分も多く、具体的な方向性を早く示すよう求める声が上がる。地域移行が進むかどうか、現場の試行錯誤が続きそうだ。

 「経験者や資格(ライセンス)を持った指導者がいれば教員の負担は減り、生徒の練習の質も上がる」。県中地区のバスケットボール部顧問の40代女性教員は地域移行に期待を寄せる。

 中学校では教員の専門教科で配属先の学校が決まるため、未経験の部活動の顧問を任される場合もあり、長時間勤務とともに学校現場が抱える長年の課題だ。

 同庁は地域移行後も教員が希望すれば指導を続けられる仕組みも検討しているが、具体像は見えない。この女性教員は、学校現場の働き方の改善につながるとしつつ「自分は休日も指導したい」と望んでおり、制度の行方に関心を寄せる。

 浜通りで野球を教える40代男性教員は「少子化に加えて競技人口が減り、学校単位では部活動の運営が難しくなっている」と現状を説明する。ただ、陸上を教える県北地区の女性教員は、生徒が部活動と地域のクラブのどちらにも所属可能になった場合について「団体競技の場合、どちらのチームで大会に出場するか確認が必要だ。部活動とクラブで指導内容に違いがあれば子どもたちも戸惑うはず」と課題を挙げる。

 保護者は専門的な指導者に期待する一方、多感な時期の子どもへの影響を心配する意見もある。卓球部に所属する中学2年の息子がいる白河市の鈴木由紀さん(44)は「指導料などがかかったとしても、専門的なコーチにお願いした方がいいかもしれない」と語る。教員が働き過ぎと感じており「地域移行で先生も部活以外の仕事に集中できるのではないか」と思いやった。

 サッカー部所属の中学3年の次男がいる会津若松市の会社員大井徳之さん(45)は「多感な時期の子どもたちが普段の生活を見ていない外部の人とコミュニケーションが取れるだろうか」とし「問題があったときの責任をどうするのか考えなければならない」と指摘した。

 県中地区のサッカー部顧問の50代男性教員は「生徒一人一人の課題や健康状態が把握しづらくなるのではないか」と懸念する。その上で「外部講師との情報共有は必須。25年度末という一律のゴールを目指すのではなく、生徒や地域の特色に合った環境を整えることが大切だ」と提起した。

 指導員「地域で支える体制を」

 地域移行に向けた一つのモデルとなるのが、学外の指導者を迎えるため、2017年に制度化された「部活動指導員」だ。大玉村の大玉中バスケットボール部で部活動指導員を務める矢吹吉信さん(48)は「先生がゆとりを持って生徒と接し、授業の準備の時間をつくれるようになれば」と地域移行を前向きに受け止める。

 矢吹さんが指導員を始めたきっかけは、PTA会長を務め、教職員の長時間勤務の現実を知ったためだという。4年前から平日の週2日ほど指導する。生徒の命に関わるような事態に備え「学校に教員がいない土、日曜日にけがをした場合の対応の仕方などリスク管理が必要だ」と強調した。

 南会津町では地域移行に向け、社会体育を担う町振興公社との連携を模索している。陸上のスポーツ少年団で30年以上指導した代表理事の猪股純一さん(72)は「競技にもよるが、部活動をサポートする指導者が足りない」とみる。国の支援策が必要だとし「学校や自治体、地域のスポーツ関係者との連携が不可欠。部活動を地域で支える体制構築が急がれる」と述べた。

 部活動の「受け皿」として期待されるプロスポーツクラブからは好意的な声が聞かれた。サッカーのいわきFCを運営するいわきスポーツクラブの大倉智社長は「地域に根差すクラブとして貢献したい気持ちがある。多感な時期の中学生がスポーツに取り組むことは大切。クラブの施設を利用するための協力もしたい」と語る。

 ただ、保護者による練習場所までの送迎や費用負担を念頭に「所得格差などが原因で子どもたちがスポーツをする機会が失われる可能もある」と話し、支える仕組み作りを求めた。