14歳の総大将・相馬言胤さん「堂々と進軍」 相馬野馬追初陣へ

23日に始まる国指定重要無形民俗文化財「相馬野馬追」で、旧相馬中村藩主・相馬家の男子が33年ぶりに総大将として初陣する。大役を務めるのは、第33代当主相馬和胤(かずたね)さんの孫言胤(としたね)さん(14)。本番が近づく中、言胤さんは「楽しみだけれど、少し緊張している」と率直な思いを明かした。言胤さんは開幕前日の22日、相馬市の相馬中村神社で元服式に臨む。
言胤さんは、和胤さんの長男で昨年まで総大将を務めた行胤(みちたね)さん(48)の長男。広島県内で父母や姉、妹と5人で暮らす中学2年生で、地元のクラブチームでラグビーに打ち込む。
自身も数えの15歳で初陣を飾った父から「14歳になったら総大将になるんだ」と繰り返し言い聞かされてきた。それだけに、迫る初陣に気後れはないが、少しずつ胸が高鳴ってきた。
そんな長男に行胤さんは「なるべく何も言わないようにしたい。総大将になって何を感じるかは、彼(言胤さん)次第だから」と優しいまなざしを向ける。
行胤さんの初陣は、弟の陽胤(きよたね)さんの1年前となる1988(昭和63)年。「右も左も分からなかった」と笑う。ただ、甲冑(かっちゅう)を身に着け、相馬中村神社に向かう道中の出来事は34年がたつ今も鮮明に覚えている。
総大将の登場を沿道で待つ人から「よろしくお願いします。行ってらっしゃい」と声がかかった。行胤さんは「何も知らない若造が馬に乗っているだけで応援された。『何だこれは』という不思議な経験だった」と振り返る。支えてくれる多くの人たちを間近に感じ、行胤さんの胸の内に野馬追への思いが自然に育まれていった。
言胤さんは「野馬追のことは、まだまだ分からないことが多い」と話す。だが、総大将を務める父の姿をそばで見つめ、旧藩領の相双地区で11年前に起こった東日本大震災と東京電力福島第1原発事故について父から教えられてきた。「野馬追が昔からずっと続いているのはすごいこと。これからもつないでいきたい」と漠然と感じるようになったという。
最大震度6強を観測した3月の地震で、相馬市は再び大きな被害を受けた。相馬中村神社では鳥居が全壊し、石造りの太鼓橋も大きく破損した。関係者は、境内を元通りの姿にして元服式を迎えたいと、力を合わせて復旧作業や行事の準備を急いでいる。
23~25日に行われる今年の相馬野馬追は、新型コロナウイルスの影響で2年続いた規模の縮小を経て、3年ぶりに通常開催に戻る。言胤さんの初陣は、完全復活を待ち望んでいた騎馬武者の士気を大いに高めている。
自分の初陣に向け、多くの人たちが尽力していることを知り、言胤さんは心に誓う。「相馬の人たちは、地震があっても屈しないでいる。支えてくれる人たちに応えるため、堂々と進軍したい」(丹治隆宏)
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