石川忠久氏が死去 漢詩研究に尽力、元号候補「万和」考案 90歳

 
漢詩文化の振興などに尽くした石川さん=2018年10月

 二松学舎大元学長、本紙「漢字の世界 四字熟語」など連載執筆

 「平成」に代わる新元号を巡り、政府による最終候補6案のうち「万和(ばんな)」を考案した二松学舎大元学長の石川忠久(いしかわ・ただひさ)氏が12日、心不全のため東京都千代田区の病院で死去した。90歳。東京都出身。葬儀・告別式は近親者で済ませた。喪主は妻富貴代(ふきよ)さん。

 政府は石川氏ら複数の学者に考案を委嘱。最終候補に中西進大阪女子大元学長の「令和」、宇野茂彦中央大名誉教授の「英弘(えいこう)」「久化(きゅうか)」「広至(こうし)」「万保(ばんぽう)」を含む計6案が残った。2019年4月1日、政府の有識者懇談会や全閣僚会議を経て「令和」に決まった。

 石川氏は生前、福島民友新聞社のインタビューで、万和について「自信作だった。万は大きい、和はまとまるという意味があり、平和が続くことへの願いを込めた」と語っていた。

 石川氏は本紙に「知っておきたい漢詩選」「漢字の世界 四字熟語」「ふくしま漢詩紀行」などの連載を書き下ろし、漢詩の連載企画「先人の言葉」を監修した。漢字文化振興協会、徳川記念財団、福島民友新聞社などが主催し、県内各地で開いた歴史文化講演会では講師として登壇し、本県の文化振興に貢献した。 

 漢詩の研究や普及に努め、全日本漢詩連盟を設立。NHKのラジオやテレビの漢詩番組にも出演した。

 【悼む】漢詩文化の「伝道師」

 日本の漢文・漢字教育の第一人者として歴史文化の普及や漢詩研究に多大な功績を残した。

 幼少時代を過ごした満州が漢文との出合いだった。東京大で中国文学を学び、桜美林大や二松学舎大教授、同大学長を務めた。「漢文は日本人の教養の基礎」との思いから、全日本漢詩連盟を設立。全国漢字教育学会長を務めるなど漢字教育にも力を入れた。

 本紙などが主催した歴史文化講演会で講師を務めた際は、会津藩主松平容保(かたもり)の漢詩に触れながら柔らかな語り口で漢詩の魅力を紹介した。会津松平家14代当主松平保久(もりひさ)さん(68)は「容保公の漢詩の解説は大変勉強になった。容保公の心情を踏まえながら語った姿は今も覚えている」と悼む。

 「とにかく話が上手で、サービス精神旺盛。難しい漢詩も分かりやすく解説してくれた」。安積国造神社の安藤智重宮司(55)は振り返る。2014(平成26)年、江戸末期の儒学者安積艮斎(ごんさい)を紹介する講演会ではともに登壇した。「漢詩文化の伝道師のような存在だった」と思いをはせた。(高橋敦司、国分利也)