相馬野馬追...かなった「最後の出陣」 20歳の女性武者大木戸さん

 
最後の出陣に向けて練習を重ねる大木戸さん

 相双地方の国指定重要無形民俗文化財「相馬野馬追」は23日、開幕する。執行委員会は今年の野馬追で「未婚の20歳未満」とする女性騎馬武者の出場条件について、特例で未婚の20、21歳を認める判断を下した。新型コロナウイルスの影響で2年続いた規模縮小により出場できなかった女性騎馬がいたためだ。かなわないと思っていた「最後の出陣」が実現し、女性騎馬たちは意欲をみなぎらせている。

 女性騎馬5人特例

 「出たいという思いはあった」。北郷騎馬会から出陣する南相馬市出身の大木戸琉菜さん(20)は喜びを口にする。騎馬会の一員として伝統の重要性を理解しており、年齢制限で出場を諦めかけていた。しかし、各騎馬会からの要望もあり、2月に特例措置が決まった。「出場できるよ」。親族からの吉報に、大木戸さんの顔は思わずほころんだ。

 大木戸さんはおじの影響で野馬追に憧れ、相馬農高の馬術部に入部した。乗馬の腕を磨き、16歳で初陣。ほら貝を吹きながら騎馬を先導する螺(かい)役として2年連続で出場した。現場の迫力に圧倒されながらも、伝統の担い手として思いがどんどん強まった。

 その後は新型コロナの影響で出場できず、19歳だった昨年が最後になるはずだった。しかし、開幕2週間前に縮小が決まった。「悔しかった」。感染拡大を防ぐには仕方がないと受け入れるしかなかった。それだけに、今年の特例措置を切望していた。大木戸さんを含む20歳、21歳の女性騎馬5人が特例出場を果たす。

 伝統継承の重要性

 女性騎馬の出場は伝統継承の面でも重要性を増す。執行委によると、参加騎馬数は、30年前は539騎だったが、今年は354騎の予定。年々減少傾向にあり、執行委で女性の年齢制限撤廃が議論されたこともあった。

 北郷騎馬会長の泉川清孝さん(67)は「作法などを教える人材も少なくなっている」と危惧する。だからこそ「伝統には理由があるので、守る必要はある。ただ、野馬追を守りたいという気持ちがあれば、年齢にこだわる必要はないのではないか」と思いを語る。

 大木戸さんは本番に備え進学先から地元に戻り、乗馬やほら貝の練習に励む。今年は念願の神旗争奪戦にも出場を予定する。「まずは自分の役目を果たす。その上で、最後の野馬追を目いっぱい楽しみたい」。来年以降は裏方として野馬追の準備を手伝う。女性騎馬としての役割を終えたとしても、形を変えて伝統を支え続ける決意だ。(大内義貴)

 条文に「未成年の未婚者」

 南相馬市博物館学芸員の二上文彦さんによると、相馬野馬追への女性参加が解禁されたのは戦後初開催となった1947(昭和22)年で、実際は6年後の53年に初めて芸者の女性が参加したのが本紙などの報道で記録に残る。解禁の経緯は不明だが、民主化や自由化という戦後の時流の変化が一因になったとみられる。

 84年には女性参加を巡って「未成年の未婚者で化粧はしてはならない」という条文が騎馬会決定事項に明文化された記録がある。けばけばしい化粧が「武士らしい威厳さ」とかけ離れているためとされる。未成年や未婚については、出産や月経を「血忌み」として不浄と扱い、戦での不幸などを連想させると考えられていたことが関係している可能性があるという。

 23日開幕

 23日開幕する相馬野馬追は25日までの3日間の日程で行われ、今年は3年ぶりに観客を入れた通常規模での開催となる。

 23日は旧相馬中村藩主・相馬家第33代当主相馬和胤(かずたね)さんの孫言胤(としたね)さん(14)が総大将として初陣するほか、5郷の出陣、南相馬市原町区の雲雀(ひばり)ケ原祭場地で宵乗り競馬などが繰り広げられる。

 24日は大熊町騎馬会が東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から12年ぶりに大熊町内で騎馬武者行列に臨む。同祭場地では、神旗争奪戦、甲冑(かっちゅう)競馬を行う。最終日の25日は同市小高区の相馬小高神社で野馬懸(のまかけ)を行い、閉幕する。一昨年と昨年は新型コロナウイルスの影響で規模を大幅に縮小した。

 マスクや検温徹底

 新型コロナウイルスの流行「第7波」の急拡大を受け、相馬野馬追執行委員会は23、24の両日、南相馬市原町区の雲雀ケ原祭場地で観客の検温ができるよう体温計を配備するなど、感染対策を強化する。
 観客にマスクを配るほか、屋外でのマスク着用を呼びかける。みこしの担ぎ手など、人との間隔が保てない役を担う出場者には抗原検査を行う。