処理水海洋放出の設備計画認可 規制委、着工へ地元了承が焦点

 

 東京電力福島第1原発で発生する処理水の海洋放出方針を巡り、原子力規制委員会は22日、東電が認可申請していた処理水放出設備の設置に向けた計画について、安全性に問題がないとして正式に認可した。東電が設備の設置工事に着手するには認可とともに地元自治体の了承が必要で、県や大熊、双葉両町の対応が今後の焦点となる。政府と東電は来春ごろの放出開始を目指している。

 東京都内で開いた臨時会合で計画を認可した。ただ認可や自治体の了承は設備を設置するための手続きであり、放出に向けては風評被害の発生を懸念する漁業関係者をはじめとした地元の理解を得る必要がある。

 規制委は5月、ポンプの性能や地震、津波への対策などを示した審査書案を了承していた。1カ月間の意見公募では「十分に安全であるとの情報を示しながら放出すべき」「東電の運用に不安があり、厳しいチェックを願いたい」など約1200件が寄せられ、規制委は意見に対する考えを示した上で、安全性に問題はないと判断した。

 更田(ふけた)豊志委員長は会合で、東電の課題として、放出を進める上で放出前の検査・確認を迅速に進められる体制を整備することを挙げた。その後の会見では、漁業者を中心に反対が根強いことに触れ「当然反対はあり、特に漁業者が反対するのは理解できる。一方で廃炉作業を進める上で海洋放出は苦渋の決断ではあるが、避けて通ることはできない道だ」と強調。「基準が守られる限り放出が人の健康や環境、地域産品に影響を及ぼすことはあり得ない」との認識を改めて示した。

 計画では、処理水中の放射性物質トリチウムの濃度が国の基準の40分の1未満となるよう大量の海水で薄め、新設する海底トンネルを通して沖合約1キロで放出する。放出終了までは数十年かかる見通し。

 県は現在、原発の立地町でつくる県廃炉安全確保技術検討会で、計画についての議論を踏まえた報告書の作成を進めている。知事や大熊、双葉両町長は報告書を基に計画を了承するかどうか判断する。

 知事「丁寧に検討進める」

 内堀雅雄知事は「政府や東電がしっかりと風評対策をしていくことが大切だ。関係自治体と連携して丁寧に検討を進めていく」と述べた。大熊、双葉両町は正式な連絡を受けていないとして「コメントは差し控えたい」とした。

 東電は「当社の考え方や対応について説明を尽くし、多くの方の理解を深めてもらえるよう全力で取り組む」とコメントした。

 更田規制委員長「放出は一歩に過ぎない」

 原子力規制委員会の更田委員長は22日、処理水の海洋放出設備の設置計画を認可した会合後、記者会見し「処理水の放出は一歩に過ぎない。難しい問題が後ろに控えている」と述べ、溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出しなどを念頭に、廃炉工程の難題への対応に注力すべきだとの認識を示した。

 ―廃炉までの長い流れの中で、計画を認可したことについての受け止めは。
 「東京電力福島第1原発の廃炉はまだまだ困難が続く。これから東電やわれわれが闘う相手は固体廃棄物だ。これを安定した管理に持ち込むプロセスの方がはるかに難しい。(計画の認可は)多くの人に嫌な思いや心配をさせたプロセスで、理解を得ることが一番大事だ。ただ、処理水の放出は一歩に過ぎない。難しい問題が後ろに控えている」

 ―計画の認可に向け、十分な議論は尽くされたか。
 「十分に尽くされたと思っている。もともと処理水の海洋放出は、規制委が基準を守る形で速やかに実施すべきだと求めてきたことだ。(審査で)特段、技術的に大きな論点となるものがあったわけではない。ほぼ当初考えた時間と密度で審査することができた」

 ―東電に求めることは。
 「汚染水の発生量が最大量で続いた場合、1日150トンの想定になる。(海洋放出する前の処理水の)分析に長い期間がかかると、処理水がなかなか減らない状況が生まれる。(汚染水の発生源となる)原子炉建屋への水の流入を減らす努力を続けることと、短い時間で分析ができるよう体制を整えることが重要だ」

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 処理水 福島第1原発1~3号機では事故で溶け落ちた核燃料(デブリ)への注水や建屋に流れ込む地下水、雨水により大量の汚染水が発生している。これを多核種除去設備(ALPS)で浄化しているが、放射性物質トリチウムは除去できず、処理水として敷地内のタンクに保管している。今月14日時点の保管量は約130万トンで、東京電力の試算では来年秋ごろ満杯になる。トリチウムは人体への影響は小さいとして国内外の原子力施設でも海に流している。