「理解するが了解しない」漁業者に不安 海洋放出設備計画認可

 
停泊中の漁船が並ぶ久之浜漁港=22日午前、いわき市

 東京電力福島第1原発で発生する処理水の海洋放出方針を巡り、原子力規制委員会が22日、設備設置の計画を認可して手続きが進んだことを受け、漁業者からは海洋放出に対して根強い反対の声が上がった。また、県内の観光業や農業の関係者は、海洋放出に伴う風評被害への不安を漏らし、確実な風評対策を求めた。

 「理解はするけど、了解はしない」。いわき市の久之浜漁港を拠点に底引き網漁を営む新妻竹彦さん(61)はこう語気を強めた。処理水の安全性について理解を示す一方、「海は日々の生活の場。毎日、漁で頭から海の水をかぶって仕事をしている自分たちの身になってほしい」とし、「考えれば考えるほど(海洋放出を)やるべきではない。もっと慎重であるべきだ」と憤った。

 漁協関係者も新妻さんと同様の考えだ。県漁連会長の野崎哲さん(67)は「反対の立場は変わらない」との認識を改めて示し、「県漁連として中止を求める中で手続きが進んでいる。政府はその責任を肝に銘じてもらいたい」と不信感を募らせた。一方で、相馬双葉漁協組合長の今野智光さん(63)は「あくまでも反対」としつつも「廃炉作業は漁業者としても順調に進めてほしいので、複雑な心境だ」と苦しい胸の内も明かした。

 「国民の納得が前提」

 観光業や農業の関係者は、海洋放出に伴う風評被害を懸念している。郡山市の磐梯熱海温泉で「ホテル華の湯」などを運営する栄楽館グループ会長の菅野豊さん(75)は「観光業界にとっては風評被害が最も心配だ」と強調し、「風評被害による補償などについても全く話が進んでいない。県民が納得できるよう、もっと慎重に進めるべきではないか」と話した。

 会津若松市の東山温泉観光協会長の斎藤純一さん(72)は「お客さんは距離ではなく、福島県というくくりでみる」とし、「今までもあったが、原発について敏感に捉える人は宿泊をキャンセルする。処理水の海洋放出も影響がないとは言い切れない」と表情を曇らせた。

 JA福島五連会長の管野啓二さん(69)は「放出に向けては国民の納得を得ることが前提となるが、安全性についての理解がどの程度進んでいるのかが分からない」とし、「農業への風評も懸念される。政府はこれまでの風評対策の成果も示しながら理解醸成に努めてほしい」と強く望んだ。