「相馬野馬追」開幕 騎馬武者出陣...威風堂々、3年ぶり通常開催

 
初陣の相馬言胤さん(中央)を総大将に出陣する宇多郷の騎馬武者ら=23日午前、相馬市

 勇壮な戦国絵巻を繰り広げる国の重要無形民俗文化財「相馬野馬追」は23日、相馬、南相馬、浪江の3市町で開幕した。新型コロナウイルスの影響で過去2年は規模を縮小しており、3年ぶりの通常開催となる。宇多郷、北郷、中ノ郷、小高郷、標葉(しねは)郷の各地域から約350騎が出陣し、最大震度6強を観測した3月の地震など相次ぐ災害からの復旧と悪疫退散を願った。

 午前9時30分過ぎ、相馬市の相馬中村神社から旧相馬中村藩主・相馬家第33代当主相馬和胤(かずたね)さんの孫で中学2年の言胤(としたね)さん(14)が総大将として初陣。甲冑(かっちゅう)を身に着けた言胤さんは、宇多郷の騎馬勢と中村城大手門を通り、堂々と市街地に繰り出した。

 野馬追は25日までの3日間。24日には南相馬市原町区の雲雀(ひばり)ケ原祭場地で3年ぶりに甲冑競馬や神旗争奪戦が行われる。終了後、大熊町騎馬会は東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から12年ぶりに町内に凱旋(がいせん)し、地元での武者行列を繰り広げる。最終日の25日は、同市小高区の相馬小高神社で野馬懸(のまがけ)を行う。

 響く螺、進軍の高揚感

 【本紙記者体験ルポ】前夜から武者震いが収まらなかった。南相馬市原町区が本陣の中ノ郷の騎馬武者として、記者が伝統の相馬野馬追に初めて加わった。相棒は飯舘村の牧場から借り、21日に顔を合わせたばかりの元競走馬。初陣は人馬ともども、緊張の一日だった。

 原町騎馬会会員が集う我妻厩舎(きゅうしゃ)に入門し約3カ月間、乗馬特訓を受けてきた。本番の行列は、中ノ郷の立川晴雄副軍師(72)付きの御使番として、隊列に加わる。

 まず厩舎から行列出発地の相馬太田神社に向かう。陣羽織をまとい馬にまたがると、気持ちが高ぶった。道中、落ち着かない馬を慌ててなだめていると、先輩武者から「人が緊張してるから馬も緊張する。堂々と乗れ」と一喝された。

 神社には約150騎が集結。正午、夏空に出陣の螺(かい)が響いた。「参れ参れ!」。騎馬武者たちから威勢のいい声が上がり、雲雀(ひばり)ケ原祭場地まで約3キロの進軍が始まった。記者も肩の力を抜き相棒に「進め」の合図を送る。ここからは戦場に向かう一人の相馬武士。「参れ参れ!」。負けずに気勢を上げた。

 沿道には大勢の人だかり。「おかえり」「ご武運を」。3年ぶりの中ノ郷の行列に、手を合わせ、拍手を送る姿が目に入った。新型コロナ禍で日常が変わり、ようやく元の形を取り戻した伝統行事への期待の大きさを感じた。手綱を握る手にも力が入った。祭場地に無事たどり着くと、口上の機会を任せられた。「中ノ郷は立川晴雄副軍師、雲雀ケ原御本陣、ご到着!」。そう声をからし、ようやく肩の荷が下りた思いだった。

 初日が終わり、「よく頑張った」と相棒の馬体をなでると、頭をすり寄せてきた。「おまえもな」とでも言いたげだ。24日は総勢約350騎の大行列に加わり、神旗争奪戦に出場する。帰宅後、飲み干した一杯の日本酒が体に染みた。(浪江支局・渡辺晃平)

「相馬野馬追」開幕

騎馬武者の一人として出陣する記者=23日午後、南相馬市