武者行列、古里に戻った 野馬追開幕、騎馬会関係者安堵と感動

 
伝統をつないでいく思いを胸に練り歩く中島さん=23日午後、南相馬市

 相双地方に、馬のひづめの音や御使番の伝令の声が響く。23日に開幕した国指定重要無形民俗文化財「相馬野馬追」。新型コロナウイルス感染拡大の影響で2年連続中止となった騎馬武者行列が、3年ぶりに南相馬市内を練り歩いた。地域の誇りを胸に、鍛錬を重ねてきた騎馬武者たちが「相馬武士(もののふ)ここにあり」と人馬一体で威風堂々と闊歩(かっぽ)した。

 「先人たちによって連綿と受け継がれてきた野馬追を執行できたことは感動の至り」。力強く歩む騎馬武者たちの勇壮な姿に、軍師で最大騎馬数を誇る中ノ郷騎馬会(同市原町区)会長の中島三喜さん(74)の表情に安堵(あんど)感がにじむ。

 騎馬武者の多くは出勤や通学前、休日の時間を利用し、早朝から乗馬などの訓練を行う。全ては年に1度の本番のためだ。幼い頃から身近にあり、1973(昭和48)年から出場する伝統行事は、中島さんにとって「なくてはならないもので、何よりの生きがい」だった。しかし、野馬追は2年連続で規模を縮小。野馬追が騎馬武者たちの晴れの舞台となることを知るだけに「若武者たちを参加させたかった」と、神事のみを行う「省略野馬追」での開催は断腸の思いだったと振り返る。

 高齢化や規模縮小を機に「もう野馬追には出ない」との声も耳にした。「先人たちが苦労しながら続けてきた。絶やすわけにはいかない」。通常開催へ向け、関係者の思いは一致した。

 士気を高める開催前の懇親会を自粛するなど、感染防止対策の徹底を指示。迎えたこの日は、同市の雲雀(ひばり)ケ原祭場地に集まった騎馬武者たちが大勢の観客を前に宵乗り競馬などを繰り広げ、会場は幕開けにふさわしいにぎわいを見せた。

 千年以上の歴史を誇る野馬追はこれまで、戦争や飢饉(ききん)などの困難に直面しながらも先人たちが守り続けてきた。「いにしえより先人が築いてきた伝統、文化を後世に託す伝承者」と自負する中島さん。歴史の重みを感じながら、東日本大震災や東京電力福島第1原発事故、さらには新型コロナウイルスなどの苦難を乗り越え、これからも伝統をつないでいくつもりだ。

 沿道の迫力、観客興奮

 騎馬武者たちの雄姿を見ようと沿道や出陣式には大勢の観客が訪れ、行列や出陣を見届けた。

 いわき市の主婦遠藤敦子さん(59)は「馬の迫力を間近で感じることができた」と興奮冷めやらぬ様子だった。縮小開催以前にも出陣を見ており「野馬追を再び見ることができてうれしい。ずっと続く伝統行事であってほしい」と話した。

 南相馬市鹿島区の北郷本陣祭に来た相馬市の会社員遠藤浩史さん(45)は、自身も中学時代に騎馬武者として出場したこともあり、「親しみがあり、通常開催は感慨深いものがある」と語った。

 南相馬市小高区の相馬小高神社で行われた小高郷、標葉郷の両騎馬会の出陣式には、県外から訪れた観客もいた。神奈川県の教員小野有紀子さん(44)は初めて見る騎馬武者に「かけ声の迫力に感動した。目の前で見る馬の大きさにも驚いた」と振り返り、「コロナ禍で主要行事が2年続けて中止となったため、ようやく見に来ることができてうれしい」と笑顔を見せた。