テレワーク普及、「転職なき移住」に注目 自治体、好機に発信強化

 
パソコンを使い自宅で作業をする伊藤さん。「テレワークのおかげで、仕事を辞めることなく移住できた」と語る=西郷村

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、テレワークの普及が進む中、仕事を変えずに地方に移住する「転職なき移住」が注目を集めている。首都圏との交通の便の良さなどから、転職することなく、県内に移住する人も出てきた。行政側もコロナによる社会情勢の変化をチャンスと捉え、首都圏に情報を発信する動きも出てきている。

 「テレワークのおかげで、仕事を辞めることなく移住できた。緑も多くて気に入っている」。昨年6月、JR新白河駅がある西郷村に夫婦で移住した伊藤琴美さん(37)は、転職なき移住のメリットを語る。伊藤さんは都内の企業で事務職に就いているが、人の多さにつらさを感じ、移住を決断。「新幹線1本で通勤できるので便利」と同村を選んだ。現在はテレワーク中心に仕事をし、都内の企業に通勤することもある。関東圏で働く夫貴一さん(39)も「(西郷村は)家賃が安い」と喜ぶ。

 移住を促進しようと、各自治体はさまざまな政策を打ち出すが、「条件に見合う仕事が見つからない」「給与が下がったりしないか」といった不安から、二の足を踏む人もいた。仕事を変えずに、地方で暮らすメリットが感じられれば、移住を検討する人が増えてくる可能性もある。

 西郷村に隣接し、移住受け入れに力を入れる白河市によると、平均的な家賃(55平方メートル)は東京都が17万1000円なのに対し、本県は7万3000円。首都圏在住者の通勤時間は平均50分で、JR新白河駅から東京駅までは新幹線を使えば最短約70分。通勤費はかかるが、座って快適に通勤することもできるという。

 こうした魅力を発信しようと、同市や県南地方振興局は移住希望者向けの相談会開催やPR動画作成などを通して、首都圏への情報発信に力を入れる。都内の企業に勤める笠井香さん(32)は「移住相談会に参加し、移住経験者とのつながりができたことや交通の便が良かった」ため、昨年11月に千葉県から須賀川市への移住を決めた。現在も仕事を変えることなく、都内の企業で働いている。

 県内で移住希望者と先輩移住者をつなげ、情報発信活動をしている移住コーディネーターの増成貴弘さん(34)は「コロナ禍前は転職なき移住に関する問い合わせをする人はいなかったが、徐々にそういった問い合わせが出てきた。県内に転職なき移住をした人も増えてきている」と語る。

 一方で、知り合いがいない点や、「車社会で、車がないと生活に支障が出てしまう」と首都圏とのライフスタイルの違いを不安面に挙げる声もある。

 転職なき移住を進めるため、増成さんは「住んでいる人がその地域を魅力的に思える地域づくりをすることで、定住率が高まるはず」と話す。(伊藤大樹)

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 転職なき移住 テレワークを活用し、首都圏に住む人が仕事を変えることなく地方に移住すること。新型コロナウイルスの感染拡大でテレワークが進展したことで注目されるようになった。政府は東京など大都市部の企業に勤めたまま地方に移住する「地方創生テレワーク」を推進している。