「私だけ時が止まってる」被害者、やり場ない感情 飲食店爆発2年

 
事故で顔を粉砕骨折するなど重傷を負った女性。「2年が経過しても、心はあの日のまま」と語る

 郡山市の飲食店「しゃぶしゃぶ温野菜郡山新さくら通り店」で2020年7月に起きた爆発事故は、30日で発生から2年が経過した。同店の運営会社の社長らが昨年9月に書類送検されたが、それ以降は目立った進展はない。被害を受けた建物などはほぼ修繕を終えた一方、責任の所在がいまだに判明しない現状に、被害者はやり場のない感情を抱いている。

 「日常を取り戻しつつあるが、心はあの日のまま。まるで私だけ時が止まっているかのよう」。事故で顔を粉砕骨折するなどの重傷を負い10回ほどの手術を経験した同市の美容師の女性(48)は複雑な心境を明かす。

 事故当時、現場近くの銀行のATMコーナーにいた女性は、爆風で顔の右側が引き裂かれ、顔の骨が粉々に折れた。顔には手術で約300針を縫った際の大きな傷が残り、まひで口角は下がったまま。「職業柄、顔の傷は心に大きなダメージを与えている」と漏らす。

 市内の病院でリハビリに取り組むが、手術で顔に埋め込まれた九つの金属プレートの違和感は消えず、ろれつが回らない日もある。「事故直後よりは回復しているが、以前の顔に戻ることはない」。ふと鏡で自分の顔を見ると、悔しさや悲しみ、怒りなどの感情がこみ上げ涙があふれてくる。

 一方で、被害に遭った大半の建物の修繕は完了し、当時女性がいた銀行も解体工事が進む。現場には別の店もオープンし、日常を取り戻しつつある。「事故がなかったことになってしまうのではないか。私だけが置き去りになってしまう」。現場近くを通ると不安を感じるという。壮絶な事故を経験したからこそ、日常の大切さを感じるようにもなった。高校生だった長男は「お母さんの体の傷だけでなく心も潤わせてくれた理学療法士になる」と今春、医療系の専門学校に進学した。「私たち家族にとっては、人生を変えるほど大きな事故だった」。共に闘う家族や、前例のない治療に携わってくれている医療従事者には感謝の思いが尽きない。

 現在も週に2回ほどの通院が欠かせず、治療が終わる見込みも立たない。治療費は現在、被害対応基金から支払われているが、いつまで続くか保証はないという。「取り返しのつかない事故を起こした関係者の責任の所在を早く明らかにしてほしい」。女性は2年前に止まったままの時が再び進むことを願っている。

 ガス警報器とメーター、連動進まず

 郡山市で起きた爆発事故を受け、全国LPガス協会は同様の事故を防ぐためガス警報器とガスメーターを連動させるよう呼びかけている。ただ、連動率は横ばい状態が続き、業界を挙げた取り組みの強化が求められている。

 警報器とメーターを連動させると、警報器が一定のガス漏れを検知した際、自動でガスの供給を遮断できる。同協会が、全国の飲食店などの業務用施設を調査したところ、連動させている施設は事故前の2019年度が68.2%で、事故が起きた20年度は68.1%、21年度は速報値で69%と横ばい。担当者は「義務化されているわけではないため、費用の問題などもありハードルが高い」と課題を口にする。

 経済産業省がまとめた報告書によると、事故が起きた飲食店は連動されておらず、保安機関から対応を促されていた。同省の担当者は「その時に対応していれば、事故を防げたかもしれない」と指摘する。

爆発事故の経過